ヴォイス (西のはての年代記 2)
ヴォイス (西のはての年代記 2) / 感想・レビュー
榊原 香織
何てすばらしい物語! 本と猫への愛が伝わってくる。 ハーフライオンの魅力的なこと。(多分小さめのライオン) 占領され焚書された都市国家、秘密を抱えた古い館にひっそり住む少女が主人公。前作の若かった二人が魅力的な中年カップルとして登場してくるところも良い。 ル・グィンの考え方が随所に現れるのですが、晩年だから深い。 伸び伸びした女性観がきっぷが良い。
2021/04/02
Die-Go
追悼ル=グウィン。再読。前作『ギフト』での主人公であった、オレックとグライは脇役。主人公は、港湾商業都市アンサルの名家ガルヴァ家の血をひきつつも、侵略者オルド人との不幸なハーフであるメマー。彼女と脇役二人との出会いが物語を大きく動かしていく。オルド人は本を恐れ、焚書に近いことをする上に本の持ち主をも迫害する。その本を大量に保管しているガルヴァ家の秘密とは。 表題のヴォイスの意味を探り探り読んでいたのでちょっと苦労したが、物語そのものは明るさに満ちたもの。憎しみからの脱却も大きなテーマ。★★★★★
2018/03/01
星落秋風五丈原
第一作で悩める若者だったオレックとグライは結婚して有名詩人とその妻になっている。オレックは自らギフトを選び取り、グライは他者を害しないもともとのギフトを使っている。偶像崇拝を禁じ、女性の社会進出を阻み、銃を手に町を闊歩するタリバンから逃れようと、今アフガニスタンの国民は必死で国外逃亡に向かっている。アンサルは、米軍撤退によってタリバンに支配されたアフガンのようだ。書物を禁じ、女性とみれば先のように乱暴な振る舞いに及ぶオルド人が支配層。
2021/08/23
tom
とても面白い物語。さすがのル=グウィン。ゲド戦記も面白いと思ったけれど、この物語は、異能を持つ人の物語でもあり、少女の成長物語である。グウィンさんのテーマである文化の衝突でもあり、文字と本に対する尊敬の物語でもある。四拍子そろったこの物語に、次は何が起きるのかと、ついつい前のめりになって読み進めた。語り部としてのグウィンさんの本領発揮。SFファンタジーとなると、少々面倒くさくて、理解しながら読むのに一苦労することが多いのだけど、この本は楽しい。さてさて、次は最終巻。どんな物語が待っているのか。
2021/11/22
湖都
「西のはての年代記」2巻目は、アンサルという征服された街の名家の少女・メマーが主人公。1巻のオレックとグライが早くに登場し、成長した姿を見せギフトをふるってくれるのが嬉しい。予言のことは置いておいて、メマーとオレックを始めとする人々の「声」の力で局面が変わるのと同じようなことが、私達の歴史上でもよくあったように思う。願わくば、声のギフトを持つ人々が前向きな力を発揮してくれますように。あと、アンサルの本を守る秘密の部屋があって良かったと、読書家として心から思う。
2019/06/09
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