パワー (西のはての年代記 3)
パワー (西のはての年代記 3) / 感想・レビュー
榊原 香織
西の果ての国、完結編です。 3巻の中で一番長いし考えさせられます。 主人公の少年は比較的恵まれた奴隷。彼が真の自由に目覚めるまでの旅。 彼が大切にしている小さな詩集、”自由への賛歌”、作者は最初の巻で出てきた少年!(いまや大詩人になっている)
2021/04/05
Die-Go
追悼ル=グウィン。「西のはての年代記」三部作の最終巻。主人公は奴隷であり、幻<ビジョン>を見る力と卓越した記憶力を持つ少年ガヴィア。奴隷として比較的恵まれた環境で育った彼だったが、ある時から過酷な人生を歩むことを余儀なくされる。三部作の中で最も分厚く、壮大さを持った物語。自由を勝ち取り、生まれ持った才能を活かすとはどういうことか。それを目の当たりにさせられた三部作だった。これにて追悼ル=グウィンは打ち止め。また何年後かに再読したい。★★★★☆
2018/03/05
tom
シリーズ三作目。今回も特別の能力を持つ少年が登場する。彼が持つ能力は、自分に起きる出来事を見るというもの。この能力に併せて、一度読んだら忘れないという才能を持つ。そして、彼は物心のついたときからの奴隷。寛大な奴隷主に育てられ、自分の奴隷としての在りようを当然のこととして受け入れている。その彼の姉が殺されたことから始まる物語。奴隷とは何か、自由とは何か、世の中の見えようとは何かをグウィンは語る。少々かったるいけれど、後半4分の3からの脱出の旅と結末にはほろり。素晴らしいとまではいかないけれど、楽しめた本。
2021/12/22
湖都
シリーズ3作の中では1番冒険味があり、1番現実味もある話だった。過去のローマを思わせるエトラや矛盾に満ちたバーナ等の私達自身の歴史を思い返させる地域や風習、身分や民族や性別の違いとその間の争いや差別、深く考えさせられる描写は沢山あった。特に「西のはて」において女性の地位が低いことは、女性である著者からの強いメッセージか。あとは「ギフト」という言葉が、身分のある男性への奴隷女性の贈り物「ギフト・ガール」として使われていたのも印象的。言葉も物事も多面性があり、捉える方次第。
2019/06/10
てんてん(^^)/
どんな真綿に包まれていても金銀の細工が施されていようと、枷は枷なのだ。自らの運命を自らの手で切り開くことができないという事がどんなに不幸な事か、この本を読むとよく分かる。信頼していた者に衝撃をもって裏切られ放浪するガヴは、まるで荒れた暗い海に漕ぎ出す一艘の小舟だ。そんな寒々とした闇の中でぽつんと温かく灯り続ける灯台のあかり、それがカスプロの詩。声高に自由を叫ぶのではなく、自分を殺して妥協するのでもなく、淡々と己がどう生きるべきかを見つめ、歩み、居場所をとうとう見出したラストは、あまりに眩しく感動的だった。
2010/12/06
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