シェイクスピア・アンド・カンパニイ書店 (KAWADEルネサンス)
シェイクスピア・アンド・カンパニイ書店 (KAWADEルネサンス) / 感想・レビュー
星落秋風五丈原
アメリカで発禁処分を受けていた『ユリシーズ』出版に尽力したのが、シェイクスピア・アンド・カンパニイ書店である。紙媒体主流の時代、書店が自ら本を出版することはめったにない。問屋から注文した書籍を受け取り販売するのみだ。しかしこの書店は特別だった。ポール・ヴァレリー、ヴァレリー・ラルボー、レオン=ポール・ファルグ、ジュール・ロマン、ポール・フォール、アンドレ・ジッド、ルイ・アラゴンら前衛作家が集まるサロンになり、ロジャー・フライ、オルダス・ハクスリー、ウォルター・デ・ラ・メアもやってきた。
2023/04/28
秋良
偉大な古典作品ユリシーズを出版した書店の年代記。ジョイスの面倒や資金繰りなど、様々な苦労をしても書店経営を嫌いにならない情熱がすごい。お客として来店する作家や詩人もヘミングウェイやジィドなど錚々たる顔ぶれ。ただ、優れた編集者が優れた作家になるわけではないようにシルヴィア・ビーチも作家としてはイマイチ。まあ当時の文学サロンの雰囲気や作家の素顔が知れるのは良かった。
2022/11/10
lune
今でも同名の書店がセーヌ河沿いにあるが、これはオデオン通り12番地の小さな歴史的書店の回想録。英米で発禁となったジョイスの『ユリシーズ』の出版を苦難の上、実現させたアメリカ人女性店主。献身的にジョイスを支える様子、書店にやってくる後に著名となるヘミングウェイやフィッツジェラルドなどのパリで生きていた作家や芸術家たちの交流の様子が生き生きと綴られている。戦火の中も店を開き続け、当時の英米文学を影ながら支えた勇敢な女性。 ユリシーズの初版の装丁へのこだわりのくだりなど、興味深かった。
2014/07/05
こうすけ
ヘミングウェイが好きな人は、彼の本の中で一度は目にしたことがあるであろう、シェイクスピア&カンパニー書店の、店主の自伝。ヘミングウェイ、ジョイス、フィッツジェラルド、パウンド、ガートルードスタイン、ヘンリー・ミラー、トマス・ウルフ、ロレンス、ハクスリーなど名だたる面々が登場。映画監督エイゼンシュテインも。ジョイスの異常な記憶力と、この偉大な作家を全然尊敬していないナイスキャラの奥さん、ヘミングウェイがパリ解放のため兵士として現れたときのかっこよすぎる姿など、20世紀文学の巨人たちの裏話が知れる。
2020/05/15
きりぱい
ジョイスやジッド、ヘミングウェイなどそうそうたる面子が集ったサロンのような書店、シェイクスピア・アンド・カンパニイ店主の回想録。『シェイクスピア&カンパニー書店の優しき日々』をこれの復刊と間違えたことがあるので、思わぬ復刻で読めたことがとてもうれしい。並べられた本の著者が続々現れるのに高揚し、そこに見える巨匠ではない生身のエピソードに目が輝く。『ユリシーズ』出版の苦労や、最終的には寂しく感じるジョイスとの関わりに増して、戦下での閉店の経緯には名残惜しい思い。ラストの「シルヴィア!」からがもう映画みたい!
2011/06/29
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