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黄金の少年、エメラルドの少女

黄金の少年、エメラルドの少女

黄金の少年、エメラルドの少女

作家
イーユン・リー
篠森 ゆりこ
出版社
河出書房新社
発売日
2012-07-07
ISBN
9784309205991
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黄金の少年、エメラルドの少女 / 感想・レビュー

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藤月はな(灯れ松明の火)

中編小説と言うべき、「優しさ」が突き刺さる。誰にも心を開かずに本の世界のみに素直になれる生き方は私も似たり寄ったりだから痛い所を突かれた感じがする。杉教授が主人公に「あなたは自分と同族だから処世術も私のようにすべき」と教えなければ、彼女は魏中尉と仲良くなれたかもしれない。でも、もし、そうなれたとしてもそれは主人公にとって「自分らしい」選択だったのか、考えてしまうのだ。「獄」は何処かで読んだことがあるな、と思っていたらyom yomで掲載されていた事を思い出しました。歳を取ってから読んだ時の方がしっくりくる

2017/11/27

アン

人民解放軍での生活を回想する女性教師、娘を事故で失い代理母に子供を産ませる覚悟をする夫婦、死刑宣告された夫の妻などを家に住まわせる女店主…。原題は、中国語の「金童玉女」を英語に直訳したものであり、教え子と息子、二人に結婚を勧める母親、この三人の関係性を繊細に描き、もの悲しくも美しい余韻を残します。リーは自分の作品は、ある作品に語りかけていると述べ、人間性の謎に関心を抱き、他者を真摯に見つめる姿勢は一貫しているようです。冷徹さの中に覗く仄かな光を求めて、私も登場人物達と対話をしている気がします。

2019/08/14

おさむ

日本など想像もつかないほどの格差社会の中国で、強かに生きる市井の人たちをリアルに描く2冊目の短編集。デビュー作の「千年の祈り」に比べると、孤独感や毒気が強まった印象。年老いた親の介護、高齢結婚、血のつながらない親子、年の離れた夫婦など、大きく変貌する現代中国の「家族」が浮かび上がります。強烈な軍事教練体験がモチーフであろう「優しさ」、米国に渡った中国人の苦悩を感じさせる「獄」などほんとにどの作品も高い完成度です。

2016/01/21

キジネコ

ウイリアム・トレヴァーを発見し彼女は作家になりたいと思ったそうです。私は彼女を発見し、トレヴァーを発見した彼女の様に作家になりたいと思っている自分自身に驚いています。実に大それた話です。人生には予想も付かない不思議が起きるものだ・・と、可笑しく感じています。中国というカオスを視野に据え 彼女は市井の有触れた希望と夢の日常の物語を描き、不安や孤独を対置させ心情の陰影に音楽を添え、読者へ極めて個人的な対話、を仕掛けてきます。柔らかな指の感触、温もり、匂い立つ肌、影を揺らす風と光、降り続く雨音と声まで感じます。

2015/08/22

mt

唯一中篇の「優しさ」が印象に残った。主人公は41歳の1人暮らしの女性で、23年前の軍隊時代を回顧する。今も軍隊時代も陰に籠り孤独を通している。対して、誰からも仲間になりたいと思わせる人気者の友人。共通点はあるのに、自然に自分をさらけ出せる友人と、意識して人を近づけない彼女の将来は対極の進路をとる。出会った誰をも覚え、人からもらった優しさは忘れないという彼女には、その生きざまと矛盾を感じると同時に、深く長い悲しみの色が滲んでいるように思えた。続く8作は短篇だが、閉塞感が強く、読むのがつらかった。

2016/07/23

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