はい、チーズ
はい、チーズ / 感想・レビュー
ちょろんこ*勉強のため休止中
未発表短編集。どの短編も完成度が高く、素晴しい。きっちりしていて読み応えあり、どれも最後の文章がぴりっと決まっていた。O.ヘンリーを思い出した。またSF、人情噺、ホラー、サスペンスと作風の幅が広く、あの手この手で楽しませてもらった。全体的に奇妙な味系で、ほんのりとユーモアが効いている感じ。人間に対する作者の温かい目線を感じてほとんどの短編は後味もよい。「ハロー、レッド」、「はい、チーズ」、「エド・ルービーの会員制クラブ」が特に好き。それにしてもこんなに有名な作家なのに未発表作品があったことに驚きを感じる。
2014/08/24
藤月はな(灯れ松明の火)
「エド・ルービーの会員制クラブ』はフィリップ・K・ディック的で表題作はロアルド・ダール的かな。「鏡の間」は怪奇小説の手法から驚きのオチへ。「ナイス・リトルピープル」はうだつが上がらないが夢想家の主人公の見たものが現実か否かで途端に怖くなる。「新聞少年の名誉」は新聞少年やその父は実は本当の意味での勇敢なものであるという結論に心温まる。勿論、最後も意地悪く、ニヤリ。個人的に好きなのは「ハロー・レッド」。所有権を示すレッドより髪を大事にしていたナンシーにあんなことはして欲しくなかっただろうエディの方が父親らしい
2015/07/30
miyu
SFフリークでない私にとって彼はSF作家というよりもヒューマニズムが見え隠れする話をスタイリッシュに語る人。そして根底には常に密かな哀しみが存在する人。この新しい作品集は短篇集で、おまけに本人自らお蔵入りにしたものばかりらしい。そんなの、世に出していいのか?(笑)ビタミンカラーとも言える鮮やかな黄色の装丁に、読む前からウキウキ感を覚えて期待してしまった。中のイラストまでがヴォネガットなんだもの。なんて贅沢なことか。中身にガッカリなんて絶対にあり得ないから安心して読めるのも、私にとってのヴォネガットだ。
2014/12/02
りつこ
SF苦手な私にはハードルが高いのではないかと思って敬遠していたヴォネガット。思いのほか読みやすくて、楽しく読んだ(これってSF??)。ブラックなものから、思わず「ううん」とうならされるもの、そして身につまされるもの…。バラエティ豊かなので退屈しない。楽しい。他の作品もおそれず読んでみようと思った。
2014/10/24
くさてる
SFのイメージが強い作家だけれど、わたしがいちばん好きな彼の長編は非SFの「母なる夜」。そのせいか少し捻った普通小説がほとんどのこの短編集も面白く読むことが出来ました。シニカルななかにも温かさが感じられる「FUBAR」「この宇宙の王と女王」が好きだけど、個人的に面白かったのが「小さな水の一滴」。これ、人によっては、知恵を使って恋愛に勝利した女性のお話なんだろうな。私には不愉快極まる手段で他人の人生に侵入していく女性にしてやられたプレイボーイの悲劇に思えます。色んな味が楽しめる短編集でした。
2015/03/28
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