服従
服従 / 感想・レビュー
starbro
図書館の予約に大幅に出遅れて、ようやく読めました。ミシェル・ウエルベック、初読です。現在のロンドン市長がムスリムだったり、過去の歴史でヨーロッパの一部がイスラムに征服されたことを考えると、近い未来に十分ありうる内容だと思います。澁澤龍彦訳で昔読んだ「O嬢の物語」における服従とイスラム教における服従がイコールという解釈には大変ビックリしました。いずれにしても諸悪の根源は、他者に不寛容な一神教に間違いないですが、2000年以上に渡って対立しているので、21世紀に解決・和解することはありえないんでしょうネ(笑)
2016/07/10
ケイ
フランス社会は、左よりになると極右も強くなるそうだ。そしてフランス人は、極右が強いのは恥だと一般的に言う。ユダヤ人を攻撃することは、ナチを憎むフランス人は表面的にはするわけがない。その心理をうまくついている。しかし、あり得ない。一種のSFだ。あまりにも滑稽。イスラム教にアレルギーがおありかもしれませんが、改宗すれば妻も何人も持てますよ。思ったほど窮屈でもありませんよ。ときましたか。クンデラは「冗談」で不条理さを哲学的に昇華させたが、ウエルベックは滑稽さを呈示したに過ぎないように思う。
2016/04/18
Miyoshi Hirotaka
トゥール・ポワティエ間の戦いで、イスラム勢力の侵略を阻止し、グラナダ陥落後はイベリア半島を回復した。以降、ヨーロッパの戦争は、新教対旧教に王位継承が絡む身内の戦い。航海技術と産業革命でイスラム圏を含むアジア・アフリカを圧倒し、世界中の富を集中させた。2度の大戦の反省から、戦争防止の仕組みが構築されたが、異民族の流入で、ヨーロッパは崩れつつある。過激な民族主義政権で国のかたちを回復するか、潤沢なオイルマネーに支えられたイスラム政権に順応し、服従するかという選択がやってくる。その時、知識や教養は無力化する。
2017/11/14
Vakira
ウェルベック最新作にて初体験。2022年の近未来のフランス。議員選では、テロによる妨害、殺戮、大統領は穏健派イスラーム教信者となり、フランス国内の生活は徐々にイスラーム化していく。現実にフランスにてイスラーム過激派の殺戮テロが実際に起こる前に書かれた預言書のようだ。しかしこの小説では殺戮の酷たらしい情景は一部表現あるがそこに焦点を当てた物語ではない。イスラーム化というあり得ない状況を次第に受入れるという主人公の葛藤と洗脳の物語。イスラーム社会では男女別学、女性はベールを被る。
2016/05/13
Tui
フランスがイスラム政権の国になる。この設定は一見、荒唐無稽だ。だが希望的な将来像を描けなくなった国民が、もしも過激な極右政党と、穏健なイスラム同胞党のいずれかに国を委ねることになったら、果たしてどちらを選ぶだろうか。一神教の揺るぎない価値観と、オイルマネーのバックボーンという盤石の安定感が、ヨーロッパを包む不安感の隙間から浸透してゆく様子が実にリアル。(私の価値観からは『服従』そのものとしか思えぬ)この物語下のフランスに生きる女性の視点から描く物語がもしあったら、ぜひ読みたい。
2017/04/02
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