ユリシーズ1-12
ユリシーズ1-12 / 感想・レビュー
たーぼー
『若い藝術家の肖像』において、飛翔を試みたスティーブンが見たものは、動かし難い強固な現実と、アイルランドに脈々と流れる突きつけられた重い歴史であった。人は神の導きにより、偉大な目標へ向かうべきなのだろうが、そこにスティーブンの理想とのジレンマが垣間見られ、本人はいたって飄々とした態度を取りながらも、やるせない苦悩を隠し切れていないように思える。彼にとっての人生は、信心深い過去であり、怠惰であり、自己陶酔であった。それは彼に内在する聖と魔が常に両立して存在していた証にほかならないと思う。(続く)
2017/01/07
燃えつきた棒
無いっ!注が無い! 丸谷・永川・高松訳で、あれほど苦しめられた注の氾濫が、どこにも無い! こんなことが出来るのか? これはひとつの革命だ! 心なしか、夾雑物がなくなって、人物の姿や出来事の流れがくっきりと見えてきた様な気がする。 注だけでできてる本だって何冊もあるというのに。 過剰な気配り、目配りを封印してみせた柳瀬氏の潔さに惚れた。 これは凄い!豪腕と言うしかない。/
2022/07/31
春ドーナツ
挿話から類推するのですが、集英社版はウラジーミル・ナボコフが英訳した「エヴゲーニイ・オネーギン」(足掛け15年の偉業。膨大な注釈付きで1200頁を超える大作*因みに岩波文庫版は232頁)みたいな大著となっております。「ユリシーズを燃やせ」なる評伝で外堀を埋めて本丸に挑むものの、一巻目で挫折した(脚注に沈む)。「ナボコフの文学講義 下巻」を読む前に課題テキストを下読みする試みも「あと一歩」で中絶。悶々とした日々を送る。某日、前途に光明を見出す。訳者逝去につき未完であるものの訳注零の本書が刊行されたのだった!
2018/03/17
paluko
これで全18章のうち3分の2を読了した計算。そして柳瀬尚紀さん訳はここで終わり(涙)。付録「ユリシーズ・案内」にダブリン中心部の地図、ジョイスの年譜、主要登場人物一覧(B4判がびっしり埋まる分量!)、それに「対局する言葉」と題された若島正さんの柳瀬尚紀さん追悼文的なものが載っています。しょうじき意味不明で読むのが苦痛な部分もありましたが、とにかく好奇心がかき立てられる作品です。元ネタの『オデュッセイアー』読み返してからまた戻ってきたい。
2021/10/18
バナナフィッシュ。
最後の砦、ユリシーズ 。これは一気に読むものではなく、ウイスキーでもちびちび呑みながら、何度も繰り返し読むべきもの。柳瀬さんの言う通り、これは読者への挑戦ではなく、読む事を愛する者への愉悦なのだ。とにかくブルームと一緒にダブリンの街を歩き回そう。
2019/11/03
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