人みな眠りて
人みな眠りて / 感想・レビュー
Shintaro
『スローターハウス5』とのあまりの筆致の違いに驚く。なんと懐の深い作家なんだ、ヴォネガットは。こういう作品が死後に出版されるのもすごい。本作は16編の短編集だが、O.ヘンリーを髣髴とさせるようなストレート・フォワードな米国人の短編であり、難解さやフラッシュバックはみじんも感じない。ヴォネガット、実にいいやつなのだ。初期の作品ということだが、すでに戦後でドレスデン爆撃は体験済のはず。親に先立たれた甥っ子たちを引き取り、まっとうな生活をしていくなかで、例の体験が醸成され、やがて書けるようになったということか。
2017/06/28
Panzer Leader
本書はカート・ヴォネガットの1950年代に書かれた未発表短編集。シニカルかつユーモア溢れる語り口ながら最後には心に染みるラストを迎えるオー・ヘンリー風な作品もあれば、家庭を顧みない鉄道模型マニアが遭遇する悪夢をコミカルに描く作品などもありバラエティに富んでいる。ちょっと前に読んだジム・シェパードの「わかっていただけますかねえ」よりは納得できるオチの短編が多くて読みやすい。
2018/09/12
アン
図書館で一目惚れ。どの短編も舞い降りたオチにまぁ!と驚き、ヴォネガットの眼差しが愛おしく感じます。『スロットル全開』「ルース』がお気に入り。−この世を動かしてるのは愛だ–素敵な一文があちこちに。
2018/09/21
ヘラジカ
誇張なしに収録作品全てが面白く楽しく満足のいく短編集。ひとつひとつ読み終わる度に帯のコピー「これでお別れ。」が思い出されて涙ぐみそうになった(ろくにヴォネガットの小説を読んでいないにも拘らず)。お気に入りは、ありきたりなテーマ・ありきたりな展開を爆笑ものに仕立てた『スロットル全開』、ヴォネガットの優しさに心の芯から温まる『ルース』、意外な運びで幸福とロマンスの成立を描いた『金がものを言う』の3篇。つい最近知った作家であるエガーズが解説を書いているのも嬉しい驚きだった。(2017・35)
2017/05/03
miyu
『はい、チーズ』読んでからもう3年半も経つのかと感慨深くこちらも読了。初期の未発表作品とのことで、え?これで初期なの?充分完成してない?と驚きつつも、ああこの頃から既にヴォネガットはヴォネガットだったんだとしみじみ。作品によっては結構シニカルなのに冷たくはなくて、何かしら暖かみさえも感じさせてくれる独特の作風だ。着地点は薄々分かるから短篇にありがちなラストどんでん返し等のお楽しみはそれほど無い。それでも読後の満足感は高く、たいていは幸せな気分にしてくれるとこが流石だ。そしてイラストは今回も怖可愛かったぞ。
2018/06/04
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