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理由のない場所

理由のない場所

理由のない場所

作家
イーユン・リー
篠森 ゆりこ
出版社
河出書房新社
発売日
2020-05-19
ISBN
9784309207964
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理由のない場所 / 感想・レビュー

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ちゃちゃ

物語というよりも、どこまでも平行線をたどる、現実にはあり得ない母と息子の対話。なぜなら、息子は16歳で自らの命を絶ったからだ。知的に早熟で聡明なニコライ。作家で大学でも教鞭を執る「私」。時制を超越した「言葉の世界」でなされる対話は、時に辛辣で手厳しく、時に神経質なほど言葉にこだわり、時に母親の悲嘆と絶望が滲み出る。生を与えることの痛み、与えられた生を生きる苦しさ。混沌とした言葉の連なりは、永遠に続く答えの出ない場所で、深い喪失の悲しみと対峙しながら生き抜こうと格闘する「私」の姿そのものなのかもしれない。

2020/11/25

KAZOO

この作者は私の好みでいくつかの作品を読んでいるのですが、これは背景としては結構悲しい物語なのですんね。作者自身の経験からこの本でむかしの悲しみを少しでも和らげあるいは忘れないために書かれたのでしょうか?16差で自死した息子との対話がこのようなものであっていつも自分の近くにいてここにあってほしいような気持が現れています。ほとんど対話ということであっという間に読みました。英語版も持っているので再読しようかと思っています。

2021/04/29

どんぐり

16歳の長男を自殺で亡くしたイーユン・リーの、いま・ここにいない息子に語りかける16篇。「私が欲しいのは、いつでもニコライがいる昨日と今日と明日」—―その叶わない想いを書くことで息子を再生させ、語り合う物語。特別にストーリーがあるわけではない。「ママは書かないではいられない」と息子は言い、「それは私が悲しみたくないから、それとも悲しみ方がわからないから」と自己問答しながら個人的救いを求めるものになっている。→

2021/03/04

アキ

つらい物語。16歳で自死した息子とこの世の母親との16章からなる対話。息子は作家である母親と口論しつつ、とりとめもなく綴られる想い。中国生まれの米国で生活する母親は辞書で言葉の語源までさかのぼり正確に使用しようとする。「わたしたちはかつてニコライに血と肉を持つ命を与えたが、私はそれをもう一度やっている。今度は言葉によって」米国生まれの彼は言葉の語源を易々と飛び越え母親に指摘する。母語でない言語に母親は戸惑っているよう。まるで目の前の息子に諭されるように。著者は個人的な事情を明かしていないが、事実らしい。

2020/06/14

nobi

久々の小説。久々のイーユン・リー。いきなり献辞を見てえっと思い、もしかしたら、徐々にこれは紛れもなく…と揺さぶられる。非現実であるはずが現実と見紛うほど。悲しみは、その悲しみを齎した責任が母親である自分にあるのではないか、との自責の念に繋がって。ただその自責の念のあり方にも彼女自身、ではなくて彼、が辛辣にコメントしてくる。忠告に従ってたとえ今見直すことができたとしても過去に遡ってのやり直しは効かない、という辛さ。母親自らが呼び覚ましたはずの記憶は、会話の抑揚まで聞こえそうな日々の出来事のように生き始める。

2021/12/04

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