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血を分けた子ども

血を分けた子ども

血を分けた子ども

作家
オクテイヴィア・E・バトラー
藤井光
出版社
河出書房新社
発売日
2022-06-24
ISBN
9784309208558
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血を分けた子ども / 感想・レビュー

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buchipanda3

短篇集。冒頭の表題作からして結構ガツンときた。普段あまり考えない生存の厳しさみたいなのを度胸の据わったハードな描写によって思いしらされた感じ。と同時に生殖の本能が背負うものの大きさにもグサリと。ある意味、究極の支配者と被支配者の関係であってもそれを越えるものなのだ。「夕方と、朝と、夜と」の医療の果てしない探求によるエラーの皮肉な結果や「話す音」のウィルスなどで起きた滑稽ながら哀しきサバイバルは人や社会がもらたしたものであり、人の道筋の脆さを思い出させられる。そして最後の二篇で著者の思いが締め括られていた。

2022/12/27

ずっきん

全てが素晴らしかった。唐突に始まる物語たちは、たおやかで温かく、なにより強い。物語の核はけして揺るがない。SFファンタジーとはいうが、ジャンルは超えていると思う。ファーストコンタクトで描く恐怖と愛。残酷な孤独と希望が混在するディストピア。『恩赦』で謳われているのはあきらかに現代の紛争と戦争についてだ。欲、嫉妬、憎悪といったネガティブな糸が、しなやかで美しい物語へと織り上げられる。ああ、なんてものを読ませるんだ。こんな作家がいたのか。もういないことがたまらなく哀しい。誰彼なく熱く勧めたい。むろん年ベス入り。

2022/08/01

(C17H26O4)

再読。最初図書館で借りて読んだのだが、購入した。地球外生命体の出てくる表題作以上に他作品に強く惹きつけられた。自らの心身を抉り傷つける人類は、現実の延長線上、いやもっと近く、それどころか現在の私達のように思えた。絶望の中、世界を未来に繋ぐものがあるとすれば、それは愛なのだろう、と思えたことは救いだった。気楽に読めない重さと深さのあるSFというカテゴリーを忘れた短編集だった。遺伝性疾患を持つ学生を描いた『夕方と、朝と、夜と』、言語コミュニケーション手段のなくなった世界を描いた『話す音』が特に印象を残した。

2022/10/14

Vakira

河出書房新社に感謝。ハヤカワ文庫も創元SF文庫にもバトラーさんの作品、出版されておりません。だからノーチェックのSF作家さん。いやテーマ的にはSFと言うプロットを使用した純文学。なかなか心に刺さります。愛のために妊娠を選ぶ、少年の妊娠物語であったり、自分の肉体を嚙み千切る遺伝自殺病であったり驚きの発想短編集。おお~ディストピアの近未来、人とのコミュニケーションである声がなくなる世界。あのジャン・レノを有名したリュック・ベッソンの伝説の映画「最後の戦い」を思い出しました。もっとバトラーさんの作品読んでみたい

2022/11/23

ヘラジカ

今まで全訳が刊行されていなかったのが心の底から不思議に思えるほど素晴らしい短篇集。どの作品も前置きなく投げ出されるが、世界の全貌がある程度明らかになった瞬間、呑まれるように没入してしまう。必読級の傑作ばかり。特にSF色の強い4篇、表題作、「夕方と、朝と、夜と」「話す者」「恩赦」「マーサ記」は、発想と語りの巧さに感動する名篇だった。それぞれ著者の短いあとがきが付与されているのも良い。どうやらバトラーは続々と長篇の邦訳も予定されているらしいので、今から楽しみに待ちたいと思う。

2022/06/27

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