滅ぼす 上
滅ぼす 上 / 感想・レビュー
starbro
ミシェル・ウエルベック、4作目です。フランスのベストセラーということで読みました。近未来仏大統領選小説、上巻は一気読みです。続いて下巻へ。トータルの感想は下巻読了後に。 https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309208879/
2023/08/24
やいっち
ファンなのかな、ウエルベックの作品は大半を読んできた。「セロトニン」には圧倒された。あれ以上どう深化させるのか…と怪しんでいたが、なるほどスケールアップの面白さ。把握している領域が幅広い。政治から下世話までヒリヒリするほどの表現。上巻、さすがの場面で終わってて、さっさと下巻に移るしかない。憎いぞウエルベック!
2023/10/25
どんぐり
ウエルベックの最新作。大臣秘書官のポール・レゾンを主人公に描いたフランスの政治とテロ、移民問題、医療、尊厳死、セックスレス、個人と家族。冒頭のネット上に拡散された経済相へのテロを予告する動画。いったい何が始まるのか。「人生とは事務的、技術的な困り事の連続、そこにときおり健康問題が介入する」物語の進行とともに、夫婦関係に影が差すポールが見る非現実的な夢。突然、父親が倒れ植物状態に陥り、家族を巻き込んでいく。自身の健康問題がほかの問題を押しのけ、死へのレースとなる下巻へと続く。
2023/09/09
syaori
時は2026年、所はフランス。主人公は経済・財務大臣の腹心ポールで、彼の夫婦関係や父や弟妹との関係、謎のテロ事件などを巡って物語が進みます。そこから浮かび上がるのは、世代が進むにつれ活力が失われてゆくことや、富裕層と貧困層に二極化する社会、都市圏と過疎化した地方の格差といったフランスの、近代資本主義、自由主義の行き詰まり。同時に、通奏低音のように登場人物たちの生の孤独が語られて手詰まり感を彩ります。「減速と停滞が進行する」「この世界」をポールはどう生きるのか。テロの狙いが「近代世界」だと示唆されて下巻へ。
2024/01/16
Vakira
「滅びる」という題名なら、平家の物語の冒頭「沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす、驕れる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし、たけき者もついにはほろびぬ、ひとへに風の前の塵に同じ」の様に普通に存在する時の流れを感じますが「滅ぼす」とは時の流れに関係なく、能動的に消滅させる事。西暦2027年、今から4年後にはフランスでは大統領選がある。そんなプチ未来が物語の舞台。この2027って数字、307番目の素数である。自然に反する異常性を醸す数字。題名だけでなくプロットもストレンジワールドを予告して、始まりぬ。
2023/11/21
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