家屋と妄想の精神病理
家屋と妄想の精神病理 / 感想・レビュー
あたびー
屋根裏に誰かいて家の中のものを触ったり汚したりすると訴える老人についての本です。義母が生前屋根裏ではないが家の中に誰かいると言って警察まで呼ぶこともあったのですが、それとはチョットだけ違うようでした。謎の同居人がいると主張する以外は認知症の傾向は認められないらしいのです。義母はそれ以外の認知症の症状も沢山持っていました。筆者はサブカルチャーやミステリー、スリラーなどにも相当造詣が深いようで、たくさんの引用(乱歩など)がされています。事情があって家移りする予定の実母がこうした症状を発するのではないかとの危惧
2023/01/11
ankowakoshian11
少し前に観た映画の影響で、もし自分が認知症になってしまったら?と想像して暗鬱になっていた。認知症の症状は妄想がセットになっていることが多い、この本で取り上げられているケースの中にもいくつか該当するものがあり、自分がこういうことを言い出したら危ういなと考えつつ、でも、それは自覚出来ないからどうすれば良いのだと更に気が重くなる。"家は狂気を培養する孵卵器"
2023/11/12
人生ゴルディアス
一瞬ツイッターで話題になっていたやつ。その時は、家の中というのは他人の目がないから心のうちの狂気が如実に表れる……という感じだったが、本書はどちらかというと「天井裏に誰かいる」というよくあるらしい空想の同居人症状についてのエッセイという感じ。なお20年前の本なので、精神医学が医学というより文学だった頃の残り香が感じられる。なので屋根裏に誰かいるという妄想がたびたび発生することについての仮説も、文学めいている。褒めていません。
2023/09/21
かわかみ
著者は臨床経験が豊かな精神科医。テーマは精神病理としての、屋根裏に人が潜んでいるとか、幻の同居人とか、の幻覚や妄想である。著者の臨床経験や世を騒がせた事件などを引用しているのだが、われわれが江戸川乱歩の「屋根裏の散歩者」や、雨穴の「変な家」を読む時に立ち現れる不思議な感覚と共通するものがそこにはある。怪談や都市伝説の根源にあるものを我々の心性の中に探ることをたすける一書。
2023/03/29
masoho
淡々とした語り口、でありながら、屋根裏オタクの早口で色々な「屋根裏部屋に人がいる」症状が語られる。都市伝説のくだりで、『「安直で凡庸な物語」とは誰もが自由につかうことのできるコミュニケーション・ツールであり』という一文があり、ああなるほど、噂話という体での怖い話が人の口にのっていくのはコミュニケーションそのものなんだな、と腑に落ちた。妄想も結局個人特有のものでもない、共有されたモチーフを使ってるだけかと思うと、救いがたいのか、もしくはとっくの昔に救われてるのか。
2023/03/11
感想・レビューをもっと見る