増補版 1★9★3★7(イクミナ)
増補版 1★9★3★7(イクミナ) / 感想・レビュー
chanvesa
戦争の加害の面を自分自身の問題に取り込めるかということは、辺見氏も苦闘しており、読み手にも苦闘を強いる。その意味で実につらい読書となる。小津安二郎の戦争への意識(193頁~)、辺見氏の阿川弘之氏との対決の場面(261頁~)、丸山真男氏への吉本隆明氏の批判(336頁~)の三つの場面が自分自身への戦争の問題としての取り込みにとって考えさせられる。わたしの死んだ祖父は戦地に行った話をし始めると途中から泣き出した。辺見氏のように何回か、戦地で何をしたのかを聞き出そうとしたが不可能であった。感情と絡むことの複雑さ。
2016/09/11
ジョナ
日中戦争に突入し南京大虐殺が行われた1937年。本書は、小説「時間」を話の縦糸にして、書き手・辺見庸の私記を横糸にして綴られる。しばらく読むと、つま先が熱をおび、関節は固まり、頭が冷たくなった。数字という記号に誤魔化され、忘却されたひとりびとりのことを想った。戦争責任への「そらっとぼけ」を暗黙のうちに受容してきたヌエのような戦後社会を想った。吐き気がした。ふいに嗚咽がこみあげてきもした。それでも読まずには済まされなかった。そして、知らずには済まされないことが、知らずに済まされてきた70年を思った。
2016/07/08
ZUSHIO
頭痛や目眩がするほど読むのがつらくなる本でありながら、人としてこの本を読破せねばならないという義務感から、ページを繰る手が止まることはなかった。 映画『日本鬼子(リーベン・クイズ)』を観たときに近い衝撃。人はここまで残虐になれるのだという真理。 そして、かの戦争から何一つ進歩していない日本。
2020/12/02
shouyi.
1937年は南京大虐殺のあった年である。そんなものはなかったと私たちはいつのまにか信じるようになってしまったのではないか。いつのまにか私たちは、この戦争の加害者から被害者になってしまった。そして現在また戦争の道を歩もうとしている。「戦争なんて簡単だ。」と辺見さんは言っている。悪い方向に向かっていると空気は感じるが、まさかと思っているのは楽天的だとひしひし感じた。
2018/11/03
犬吉
読みは始めると、途中でやめられなくなってしまった。感想はまだかけない。いつか自分の中で消化して、書けるようになるかどうかも分からない。
2017/07/03
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