西風号の遭難 (The Best 村上春樹の翻訳絵本集)
西風号の遭難 (The Best 村上春樹の翻訳絵本集) / 感想・レビュー
やすらぎ
心地よい風に吹かれて水平線を見つめている。この高台で壊れた西風号は遭難の記憶が現実だったと物語る。暗闇に灯る月明かりに照らされて舞い上がる帆は、光と影の空をさまよい続ける。暖かい光に冷たさを感じながら。ときに荒れ狂い突然穏やかになる海と異なり、陸の風は気まぐれさ。何が正しいのか。何が間違っていて、なぜ悲しみなぜ求めるのか。不安定な気持ちや継続の意志はどこから湧いてくるのだろう。朝焼けや夕暮れの刻を大切に感じるように、この絵本は何かを語りかけてくる。風向きが変わるたびに流されて、空と海の間で揺れ動いている。
2023/01/21
KAZOO
オールズバーグ作、村上春樹訳の何冊目かの本です。非常に幻想的な話で癒されるようなゆったりした感じがします。なぜこんな林のそばにヨットが朽ち果てているのかということから、そばにいた老人の回想話が始まります。このような一種の海洋冒険小説も楽しいですね。
2016/02/07
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
海を見下ろす高い崖に打ち捨てられたヨットの残骸。「こんな場所になぜ……」と立ち止まる旅人に、老人は昔話を始める。かつて、村で一番と言われたヨット乗りの少年がいた。彼は、村人の制止を振り切って嵐の海に出て、遭難してしまった。九死に一生を得た彼がたどり着いた不思議な島。そこには、ヨットを空に走らせる船乗り達が住んでいた。少年はその技術を盗み故郷に帰ろうと目論むが……。訳者曰く〈デジャビュのような世界〉。ノスタルジックな雰囲気に満ちたほろ苦い物語。【The Best 村上春樹の翻訳絵本集】。1985年9月初版。
2015/02/22
ムッネニーク
82冊目『西風号の遭難』(クリス・ヴァン・オールズバーグ 著、村上春樹 訳、1985年9月、河出書房新社) 神秘的な作風が持ち味の絵本作家、オールズバーグによる一冊。初出は1983年。 暖かくもどこか寂しさを感じる色彩によって描かれたイラストが、読者をミステリアスな世界へと運んでゆく。どのイラストもとても美しく幻想的で、額装して飾っておきたくなるほど魅力に溢れている。 『魔術師アブドゥル・ガサツィの庭園』に登場する犬、フリッツと思しき犬影が…。 〈「それについてはな、あんた、別の話があるんだ」〉
2024/06/14
野のこ
日本語訳から村上春樹さんらしさ感じて素敵でした。あとがきからはオールズバーグさんの光を感じた 。者を包み込んでくれるようなおおらかなタッチ、気持ち良さそうにふわふわと浮くヨットが印象に残りました。老人の語る崖の上のヨットのお話。腕のよい船乗りである少年の不思議な旅のお話。
2018/02/02
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