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枯木灘 (河出文庫 102A)

枯木灘 (河出文庫 102A)

枯木灘 (河出文庫 102A)

作家
中上健次
出版社
河出書房新社
発売日
1980-06-01
ISBN
9784309400020
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ジャンル

枯木灘 (河出文庫 102A) / 感想・レビュー

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ミカママ

前作『岬』の内容をほぼ忘れての読書、手ごわかった。紀州という土地、「路地」の姻戚関係、濃密で息苦しくなる。男たちは陽を浴び風を受け土を穿って、夜になれば女を抱く。女は性器だ、受け身でさえあればいいとうそぶく男。種馬のように女たちを孕ませた実父を性器の象徴とみなし、相いれない主人公。閉塞感と近親相姦と憎悪と。北米の南部文学を思わせる土着の文学。こんな小説を描く作家が、現代日本にいるだろうか。

2020/08/28

あさひ@WAKABA NO MIDORI TO...

1976年~1977年「文藝」。本作は既に文学的にも高い評価を受けているということですが、冒頭の数頁いや僅か数行で読む者をふるいに掛ける、決して万人向けの作品ではないなと感じました。辺鄙な紀州は熊野の田舎町で複雑な血縁関係の中、土方として生きる秋幸を中心に愛と憎悪が煮えたぎる血の物語です。今どきの作風ではないですが、人間の性を炙り出した非常に濃密な世界観に誘い込む、そんな作品だなと頑張って完読し感じました。

2018/10/06

yoshida

昭和中期の紀州。枯木灘を舞台に地縁血縁が絡む一族の物語。主人公の秋幸は母の連れ子として、血の繋がらない一族と暮らす。家業の土方として働く。実父の龍造が強烈な悪評のある人物で嫌悪する秋幸。だが、自分に流れる龍造の血が顕著であり苦悩する。養父の家系、血縁の家系と登場人物も多く読んでいて整理が必要となる。描かれる暴力に性、愛憎。非常に濃い描写が続くなか、精霊流しの夜に秋幸はまさかの行動を取る。鬱積した歪な感情の暴発か。読みやすい作品ではないが、その濃さに引き込まれる。三部作の中編であり、他二作も読もうと思う。

2023/05/22

touch.0324

紀州サーガ3部作の2作目にあたる本作は『岬』を遥かに凌駕する傑作。波涛が打ち寄せ草木も育たぬ枯木灘と、神話の土地熊野に囲まれた貧しい"路地"が舞台。信仰、歴史伝承、複雑な血縁、狭小な共同体、はたまた、そこはかとなく感じる視線や、口の端に上るうわさ話─路地の生きた記憶─、これらの重層的なしがらみを背景に、愛と憎、聖と俗、労働と搾取、生と死、性と暴力、すべてが煮えたぎる。土地≧社会≧個の葛藤は『岬』を深化させたかたち。中上自身であり、読者たる"個"は、主人公の秋幸に自分を重ね、自らのルーツを追うことになる。

2014/11/14

財布にジャック

戦後生まれで初の芥川賞作家だという中上さんの作品を初めて読みました。とにかく重い内容に、たった300ページ余が2倍にも3倍にも感じられ苦戦しました。路地(部落)という狭い世界で、血族たちが繰り広げる凄まじい生き様は、現代に生きる自分には理解しがたく、最初から最後まで読むのが辛かったです。血から逃れられない主人公の苦悩が、ひしひしと伝わってきて悲しい程でした。しかし、凄い本でした!

2011/07/01

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