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十九歳の地図 (河出文庫 102B)

十九歳の地図 (河出文庫 102B)

十九歳の地図 (河出文庫 102B)

作家
中上健次
出版社
河出書房新社
発売日
1981-06-14
ISBN
9784309400143
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十九歳の地図 (河出文庫 102B) / 感想・レビュー

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GaGa

久しぶりに再読。表題作は初めて読んだ当時、若いなあ、青いなあと思って読んだのだが、改めて読み返してみると中々良い。これは映画化もされていて、主人公を演じた本間優二というあまり有名ではない役者が好演していた。ラストが小説とは改変されていてそこが逆に良かった記憶がある。この小説の弱点はラストにあると思っているので。映画も観ることが出来ればもう一度観てみたい。

2012/03/23

Vakira

いたいた。ここでラスコーリニコフに出会う。19歳である。上京、浪人して予備校生。生活のための住み込みの新聞配達をしている。そこは30歳の男と共同部屋、汗と精液、新聞、雑誌と混合した臭いの部屋。隣のアパートからは夫婦喧嘩と子供の泣く声が聞こえる。普通に予備校に行ける奴らを妬む。勉強ができる奴らを妬む。大学に行ってどうなる?卒業したら官僚か?普通にサラリーマン?未来に希望はない。趣味は制裁。のほほんと普通に生きてる奴らに制裁をくわえてやる。列車爆破の悪戯電話。シャクな金持ちども~♪みんな~♪黒く塗りつぶせ~♪

2023/06/08

メタボン

☆☆☆☆☆ 中上健次初読。その粘っこく力のある文体に強く惹き込まれた。路地、底辺の生活者、日本における朝鮮人と言った、「覗いてみたい」「怖いものみたさ」の世界を、中上があぶりだしている。うまく言えないが、現実の自分では縁のないものと思っている世界に出会わせてくれ、それが「生」を強く意識させる。これが文学の力だ。新聞の配達先の地図に×をつけ攻撃的な電話をする、表題作の破壊力がすごい。血の濃さといったものを感じさせる「蝸牛」「補陀落」。そして、あったりまえに輪三郎はぼうぼう燃える「一番はじめの出来事」。

2017/04/02

Y2K☮

解説書いてるT氏の授業を取っていた。中上を頻りに賛美して大江健三郎の思想を延々擁護するのにげんなりし、ずっと中上健次を遠ざけていた。読友さんの勧めで初読。私小説かと思わせる緊迫感と生々しい体液の臭い。且つ男らしさを売りにする(あえて云うなら)初期の村上春樹的なあざとさとは無縁。むしろデカダンな肉体労働生活の裏に秘した繊細で臆病な素顔を曝け出す。人間の正体はこんなもので男の男らしさも女の女らしさも仮面に過ぎぬ。庶民にとっての真実に満ちた、綺麗事が通用しない絶体絶命の文学。あの時のT氏の賞賛が少し腑に落ちた。

2015/08/29

スミス市松

これまでどうしても中上健次を読み通すことができなかったのだが、なぜか今になって箍が外れたように一気呵成に読んでいった。久々に食い入った。か細い一行一行が巨木のように感じられ、自分の方へ倒れるように迫ってきた。たぶん、破かれたのだと思う。破かれた先の向こう側には、光と風と草の匂いに満ちた場所があり、遠くから海の音が聞こえてくる。その破かれたなかへ、分け入っていく人間たちがいる。己が時間を誰の手にも明け渡さず、追い立てる一切のものから逃がれようとする。何者でもあるまいとする彼らのその力だけが、私の心を破いた。

2011/10/11

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