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吸血鬼幻想 (河出文庫 126A)

吸血鬼幻想 (河出文庫 126A)

吸血鬼幻想 (河出文庫 126A)

作家
種村季弘
出版社
河出書房新社
発売日
1983-03-01
ISBN
9784309400464
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吸血鬼幻想 (河出文庫 126A) / 感想・レビュー

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yn1951jp

死と生が交錯する境界領域を縦横に考察するエッセイ。外傷的侵入と性愛的侵入の混同(M.ボナパルト)。生のリビドー本能と死の攻撃的本能との、欲望のまたとない痙攣における同時的満足(O.ヴォルタ)。無意識の嗅覚的混乱によって血のにおいを愛のにおいと感じる(M.V.イルタン)。裸にすることは、つねに殺すことの見せかけ(G.バタイユ)。「偶然が、あの神話の時代に私を連れ戻した。私は、私が吸血鬼の一族に属していることを知った。何故私がなのか。私は説明するすべを知らない」(ジョン・ヘイ;ロンドンの吸血鬼)

2015/10/10

めがねまる

種村季弘の目眩く知の世界。それらが全て『吸血鬼』に向けられたら...?本書はどれだけいるか知れないがすべての吸血鬼愛好家にとって垂涎の一作である。右も左も吸血鬼!あまつさえ栄枯盛衰の背景たる各国の時代、文化、宗教、人物まで余すところなく網羅していて、吸血鬼に興味がなくても、感性に訴えるところがあるだろう。この魔術生について本書の一文を引用すると、「ただもう面白くて面白くて仕方がない」のである。知識の奔流に溺れながら読み進めるのは困難だが、読後の快感は最高だ。読んだら何かが変わる。善かれ悪しかれ......

2016/09/01

kasim

新紀元文庫の類書を読んだばかりなので、重複する話も多く(もちろんこちらが先行だが)復習になる。とはいえ考察の豊かさが醸す重厚感は段違い。18世紀には真剣な吸血鬼論争が起き、啓蒙が吸血鬼を光の下で霧散させると、ロマン主義者が「幻覚上等」と開き直ってやって来る。バイロンとサド侯爵が土俗の魔物を貴族に造り替えたのはパトスのロゴスへの逆襲だが、『ドラキュラ』に至って吸血鬼は通俗に堕し新しい局面へ。『魔の山』のナフタやロリータをむしろ正統な吸血鬼の系譜とみなすのも面白い。

2023/07/04

eirianda

お風呂のお供。半身浴しながら、長々と読んだ。『ドラキュラ』と並行して読んで、結構楽しめた。挿絵も写真も興味深い。生きている吸血鬼として、ジル ド レ、バートリ・エルジェベト、ジョン・ヘイの生々しい話も。そういえば、幼い頃にテレビで観た白黒の吸血鬼の映画(あれはどの映画だったんだろう?)が、異様に恐ろしかった…。私だってそんな頃もあったのだ。今では種村季弘の博識にうっとりしているというのに。

2015/12/08

ふくしんづけ

澁澤龍彦編「血と薔薇」より。同書にも収録された「吸血鬼幻想」がやはり一番名編かと。吸血鬼に魅了される感情は、抑圧された官能的資質への憧憬だと。しっくりくる。現在ではこの傾向が圧倒的だろう。畏怖の対象としてはどこか滑稽に成り果ててしまっても、その面では根強い人気がある。本書から更に時間が経って、吸血鬼視点の作品なども増えまたその姿は形を変えているが、当時の吸血鬼文献として最高級の名著と言えるだろう。廃れようと、人が在り、死が在り続ける限り、彼らは夜に潜み在り続ける。いずれ日の目を…いや、やはりそのままで。

2020/06/18

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