内的独白 (河出文庫)
内的独白 (河出文庫) / 感想・レビュー
新地学@児童書病発動中
福永武彦が堀辰雄の人生を考察した長編のエッセイ。改行が少なく、活字がぎっしり詰まった充実した内容だった。旧仮名遣いで書かれた文章が味わい深い。堀辰雄が実の父親のことを知ったのはいつなのか、という問いを中心に論考が進む。前半の同人誌「驢馬」に参加した作家たちと、堀辰雄の友情を書いた部分に一番惹きつけられた。政治に参加していく中野重治と芸術至上主義の堀辰雄という異なる個性を持った二人の文学者は、「驢馬」が終わった後も友情を持ち続けた。これは心を打つエピソードだと思う。(続きます)
2018/08/04
駄目男
以前に読んだ『墨東の堀辰雄 その生い立ちを探る』と重複する内容だが堀辰雄の父親問題で、どうも『幼年時代』には三つのテキストがあるらしい。果たして福永の追求する、辰雄が成人するに従って、上條松吉が実父ではなく養父だということを認識していたかどうかとなるのだが、生前の辰雄を知らない私たち世代では少しニュアンスとして分かりにくい。本書はただその一点を探るにあたって、実に微に入り細を穿って書かれているが、著者は、以前からこの問題に着目していたのかどうか、ともかく俎上に上げたこのテーマに対し敬意を払いたい。
2018/11/06
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