幼年 (河出文庫 130C)
幼年 (河出文庫 130C) / 感想・レビュー
空箱零士
★★★★ 内なるものの根源を求めるイノセントな詩情。私から子供へと潜行し記憶や夢を巡る。在りし日の風景を巡り根源をたどる。恐らく重要なのは喪失感だ。現在の喪失感の在処を過去に求め、そこに自らの根源を見出し喪失を目撃する。その喪失から見出されるのはかつて自らに存在した純正だ。福永作品はそのような喪失の立場から純正を郷愁する感覚に特徴があるだろう。そうした作家の「文学の核心」に『幼年』があがるのは必然だろう。『幼年』はその感覚を最も純粋に書いている作品だ。根源の感覚のみがあり具体がない。故に根源を探し求める。
2014/12/08
jansenist
人称の変化とともに、文章の途中であっても強引に改行していくという手法で現在と過去とを効果的に書き分けているように思え、それはノスタルジックな感情を読者に呼び起こす。
2013/09/17
藤村
「幼年」は再読。
2010/06/21
半朱
まだ「草の花」しか読まないうちにこれを読んでしまったのは、多少勿体なかったかもしれない。このノスタルジックな感覚は、福永作品の核となるものなのだろう。表題作の「幼年」と「伝説」が良かった。
2009/06/01
寛理
大岡昇平は『幼年』を書くとき、すでに『幼年』を書いていた福永武彦に電話して同題で発表する許可を取った。
2020/10/21
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