思考の紋章学 (河出文庫 121K)
思考の紋章学 (河出文庫 121K) / 感想・レビュー
猫丸
昭和63年三版を再読。書物に現れた感受様式を幾何学的に理解する本。劈頭「ランプの回転」は「遠野物語」における炭取の回転への三島由紀夫の注意から、泉鏡花「草迷宮」の回転する迷宮構造へ至るグルグル幻想の話。胎内回帰、アリアドネの糸、カフカ、エリアーデと話は広がる。至福の書物周遊である。文学者の精神に内在する幻想の形を迷宮、円環、振動、無限平面などの紋章としてえがく意図があったものと見られる。洋の東西を問わず個人に固着した思考の癖を捉えるアンテナの鋭さが印象的。さすがの澁澤である。
2022/06/07
Koki Miyachi
知的な刺激の詰め合わせ。ヨーロッパから日本の古典文学まで、自在に駆け抜ける。彼の着眼点は実に素朴でストレート。ちょっとした小さなこだわりが、次第に大きくなって、力強い論理の流れとなる。その鮮やかな腕前にはいつもながら惚れ惚れする。平易な語り口の中に難易度が高い概念が織り込まれていて、いつの間にか奥深い澁澤ワールドに導かれているって感じ。やっぱり好きです、澁澤龍彦。カッコイイなぁ(^^)
2013/04/23
ジョニジョニ
本が好きな人なら、どこかに面白く思える箇所が必ずあるであろう広範囲な知的エッセイです。でも僕には、最後までタイトルの「思考の紋章学」という言葉が理解できなかった。読んだことのない面白そうな本がたくさん出てくるので、ちょっとずつ追いかけてみようかな、と思いました。
2018/11/19
毒モナカジャンボ
初めて澁澤龍彦の本を読んだが明晰な文体でとにかく本が好きなのだという脱線をし、作品の説明には「当然ご存知だと思うが」という前振りがしばしば入るのがスタイリッシュで、貴族的だなあと思う。本人も認めるようにどのエッセイにもまとまりがないので要約するのは諦める。時間と不死や可能性にまつわる『ファウスト』と『新浦島』での志向の違いや、植物は人間と反対に上に性器があり下に頭があるという安藤昌益の話が特に印象に残った。稀代の読書家であるから当然だが、仏幻想文学のイメージが強かった澁澤が日本古典を語るのを見ると新鮮だ。
2019/09/06
Chunko
この人の本には、泉鏡花とかソログープとか三島由紀夫とか出てきてなんだかうれしい。(三島由紀夫はほどんど知らないくせに、森茉莉の書いていた白蛇というのが気に入ってなんだか好き)パンタ=レイっていうのも出てきてたんだけど、これは稲垣足穂の書いていたパンタレイのことだろうか?もともとの意味は何だろう…
1994/10/03
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