英霊の聲 (河出文庫 110B)
英霊の聲 (河出文庫 110B) / 感想・レビュー
はりねずみ
硬質で神聖で、猛々しい古き日本の精神が表現された短編、戯曲、論文。三島事件に影響を与えた2.26事件の青年将校の霊の心情の吐露は悲しく、胸につまるものがあった。忠義や日本の神聖といったものが、何か新しい概念のように新鮮味を帯びて読まれることに、いかに時代が変わったかが感じられた。三島は古い日本と新しい日本とを跨いだが、私は新しい日本で育ち、三島の守ろうとした日本は、彼の文学などを通して知る他ないが、それでも十分に理解可能だということは、私の知らない間に古き日本の匂いが染み込んでいる証かもしれない。
2014/06/02
echo.
「などてすめらぎは人間となりたまいし」 昭和に憤死した男はこれが最後であろう。唯識でいえば生きても死んでも心々、そして三島は死んだのだ。
2019/03/10
馨
表題作の英霊の聲、本当に戦ってなくなった先人の思いを聞けた気がして胸が苦しくなりました。
2013/04/04
かめちゃん
「漢意のナチスかぶれ」(39頁)の眼で斜め読み。陛下の御親政を「待つ」青年将校と、自衛隊の蹶起を「待つ」楯の会とが、どうしても重なって見える。ある意味、「待つ」べき他者を持たず、自分たちの中に「ゾルレン」を宿したからこそ、ナチスは「共産革命と同様の権力奪取」(194頁)に成功したといえる。だからよいというわけではないが、物理的に勝たねば、成功のあとにくる理想と現実の乖離に、「他日真に悩む」(213頁)ことはできないのも事実である。
2019/03/31
wm_09
二・二六事件に題材をとった表題作のラスト、「などてすめろぎは人間となりたまいし」のシュプレヒコールは圧巻。その強烈さは夢にでてきそうなほど。 『朱雀家の滅亡』は嫌な話。ひたすらに嫌な話。美しき滅亡の話などでは決してなく、最後に明らかになる全ての人間のエゴで崩壊する家族・華族としての意識にほくそ笑んだ。(ローウェル嬢)
2010/01/06
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