サースティ (河出文庫 た 8-3 BUNGEI Collection)
サースティ (河出文庫 た 8-3 BUNGEI Collection) / 感想・レビュー
rakim
やたらと横文字が使われ、贅沢な食事やホテルでの情事に価値観があるようで(ただバブリーなだけ?と思いながら)、短い一話一話を半ば「フン」と思いながら読んでいました。でも…田中さんは何故この一連に「サースティ」という題名をつけたのか、あの時代が「平和ぼけ」だったのを皮肉っているのか、それとも刹那的な快楽を享受しているだけ?と考え始めると、震災以降の今、田中さんはどのような小説を描かれるのかと興味を持ちました。才能がある方の回り道を感じていたので。現在の渇きを小説にして欲しい。
2016/03/05
明石
ゾクゾクするほど素晴らしい掌編小説集。 80年代後半、バブル絶頂期に都市生活を営む20代の女性たちが、満たされた日々の中で、それでも今よりほんの少し良い暮らしを求めて男との関係を築き、煩悶する物語。著者の半ページにも満たないあとがきも、批評家の方による愛ある解説も背筋が震える素晴らしさ。田中康夫の感性は、時代の側に選ばれたものなんだろうな。バブルが弾け、本作が描くような「ちょっといい暮らし」が絵空事になった時、人は彼の小説を求めなくなった。でもだからこそ、この人の小説には無二な魅力があると私は思っている。
2024/09/22
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