少年たちの終わらない夜 (河出文庫 さ 4-1 BUNGEI Collection)
少年たちの終わらない夜 (河出文庫 さ 4-1 BUNGEI Collection) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
いずれも「文藝」に掲載された4つの短篇を収録。主人公はそれぞれに違うが、ある種の連作だろう。私の中にある鷺沢萌のイメージとは大きく違った小説群だった。そう、例えば石田衣良のそれのような。石田衣良はほとんで読んでおらず、直感的な印象だが)。一種の風俗小説である。もっとも、芥川賞にもこうした系譜はある。例えば村上龍『限りなく透明に近いブルー』や金原ひとみ『蛇にピアス』などがそうだ。ここで描かれている十代の若者たちは、'80年代後半のリアルなのだろうか。だとすれば、世代は違うとはいえ自分自身の⇒
2018/01/21
新地学@児童書病発動中
ユーロビートとかパブリック・エナミーとか80年代の青春が甦ってくる内容だ。青春の光と影を鮮やかに表現する詩的な文章に痺れた。底の方に切なさを滲ませながら、それでも軽快さを感じさせる文章を読んでいると、短い人生を駆け抜けっていったこの作家の生き方を考えてしまう。4つの作品が収録されているが、その中では「誰かアイダを探して」が一番の好み。切なくて美しい短編だ。主人公の僕が出会った19歳の少女。19歳というのが大事な点で、20歳だったらこの短編は成立しない。アイダの姿は、夜空の花火のように読者の脳裏に刻まれる。
2017/05/22
佐島楓
モラトリアムの中で若さをもてあます少年たち。いつかは誰もが懐かしむ季節。ひりひりするような痛みと快楽に満ちた世界。夜明けが来るとしたら、それは大人になってしまったときなのだろうか。
2017/06/26
ココ
繊細で、殺伐として、純粋で、熱い少年たちの4つの物語。。行き場のないあやふやな恋心が切ない。女性作家さんなのに、男性の「透明なかげり」を描くのがめちゃくちゃ旨い!
2019/09/15
みや
18歳、19歳の少年たちの内面を描く短編4作収録。真面目一辺倒な学生生活を送ってきた私には、毎週パーティーで酒を呑んだり、他校の生徒と喧嘩したりする彼らの日々は未知の領域。それなのに彼らが抱く焦燥感や閉塞感、強迫観念は微かながら身に覚えがあって、遠い昔に凪いだ感情を脳の奥で擽られるような感覚だった。鋭さと青臭さ、眩しさと仄暗さが共存する青春小説。大抵のことは既にやり尽くされて、既にある形に自分を嵌め合わせていくことしかできないのは、大人になっても変わらない。それを窮屈だと思わなくなったのはいつからだろう。
2022/07/11
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