スタイリッシュ・キッズ (河出文庫 さ 4-2 BUNGEI Collection)
スタイリッシュ・キッズ (河出文庫 さ 4-2 BUNGEI Collection) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
本書が書かれたのは1990年。バブル経済の末期である。小説にもそれは濃厚に反映されていて、主人公の二人、久志も理恵もともに経済的には十分に恵まれた家庭に育ち、それぞれ高校から大学にかけて楽しみを謳歌している。けっして享楽的ではないが、かといって勉学からはほど遠い生活である。当然ながら目的意識も希薄だ。しいていえば、目前のこの恋くらい。それもまた互いに求めるものは"スタイリッシュ"であること。今思えば、それはあの時期の東京のある種の典型の一つであったか。
2023/07/17
新地学@児童書病発動中
切ない、切ない恋愛小説。80年代の享楽的な青春が鮮やかに書かれているが、登場人物の二人の男女はそんな風潮に背を向けているところがある。題のスタイリッシュはお洒落なという普通の意味ではなく、生の輝きにある翳りの部分にも目を向ける、この作者の美学を表しているのではないだろうか。海辺で東京湾に滲んでいる街の光を眺めるクリスマスの場面が、涙が出そうになるぐらい好きだ。
2018/09/09
あじ
出会った日から別れの日が決まっていたのかな。刻限を落とす砂時計が浮かんだのでした。青春の影ぼうしを追いかけて。◆90年刊 購入本
2018/10/17
メタボン
☆☆☆☆ 大切な思い出のまま終わらせようとする女と、しっかりとした大人になって庇護していこうと考える男。ある意味恋愛の最高点での別れが故に、あまりにも切ない。車を運転しているのに酒を飲むのは良くない。でも80年代後半、バブルの気分が盛り上がっていた時代を良く表しているのかも。
2021/07/05
太田青磁
私たちカッコ良かったよね。時間が過ぎるのがどんどん短くなっていること、今が『これから』に直結していることを恐れ、何も忘れたくないと想う理恵。相手を安心させるために、価値観すら捨てて変わって行くことを受け入れるチャコ。タバコの銘柄の変化や相手の視点が先に向かうことを、あまりにも敏感に受け止めてしまい一緒に変わっていくことをどうしても受け入れられないゆえに選んだ答えが切ないです。
2012/03/16
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