天体議会 (河出文庫 な 7-9 BUNGEI Collection)
天体議会 (河出文庫 な 7-9 BUNGEI Collection) / 感想・レビュー
(C17H26O4)
ここ数日、毎夜北西の空を見てはがっかりしている。雨や曇りの日ばかりで星空が見られないから。ネオワイズ彗星、観たいのにな。三等星くらいならなんとか観られそうだけど、これからもう、どんどん暗くなっていってしまう。次回は五千年後…。天体議会を招集して、彗星を少年たちは観るだろう。銅貨も水蓮も少し幼さの残る彼らは、嫉妬心までもが透き通っていて綺麗だ。光る鉱石が彼らの体内にあって淡く発光しているよう。今日も空は雲に覆われているけれど、群青の空、瑞々しく煌いている星々を観たときみたいに澄んだ気持ちになった。
2020/07/24
へくとぱすかる
1995年発行の2刷。中身は同じだろうがカバーが異なり、ブルーが基調の、単行本カバーと同じイラスト。読もうとした動機はラジオドラマを聞いたためで、原作がどんな作品か知りたかった、というわけ。鉱石ラジオを聞くのが普通であるような日常にありながら、木星に行くロケットが打ち上げられるという、ちょっとアンバランスなノスタルジーに満ちた都市に住む少年たち。鉱石を売る店に出入りし、ペンシルロケットを打ち上げ、意識せずに科学少年である登場人物たち。物語というより、小説の形をした詩、詩情のみで綴られていく物語だと読んだ。
2015/07/08
mii22.
人口の激減により家族、母の在り方が今とは違った近未来を想像させるSF設定になっているが、全体を包むノスタルジックな色合いは長野作品らしい。思春期の少年たちの友情と好奇心、大人の入り口に立った兄との確執。繊細で悩み多き少年たちの心情が見事に描かれている。夏の終わりから新年を迎える半年間の彼らの成長は確実に大人へと向かっている。彼らが出会った自動人形かもしれない不思議な少年の謎多き言動はそれらすべてを表しているかのように思えた。三日月少年にも登場する「水蓮と銅貨」は私にとって最も心惹かれる少年たちだ。
2018/12/18
優希
素敵なファンタジーでした。鉱石や星座などのキラキラしたものであふれていて、少年たちの瑞々しさが映えますね。銅貨と睡蓮の日常と幼いけれどドライな友情、年頃の繊細な感情が美しいと感じました。綺麗な文章に愛らしい小物、豊かな風景が心に染み入りました。冷たいけれどあたたかさもある不思議な世界が広がっています。嫌らしさもなく、どこまでも澄み切った少年と世界に癒されました。
2014/10/06
tomoko
再読。他作でも登場した2人の少年、銅貨と水蓮。そして謎の美少年は自動人形だったのか?天体、鉱石‥とついつい宮澤賢治を思い出す。近未来のようで懐かしい世界の中で、長野さんが描く物語は独特な透明感がある。煌めく星たち、輝く鉱石のように、少年たちはキラキラしていて、でも何故か切ない気持ちになる。
2021/08/19
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