唐草物語 (河出文庫 し 1-23 澁澤龍彦コレクション)
唐草物語 (河出文庫 し 1-23 澁澤龍彦コレクション) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
澁澤龍彦による12のアラベスクの物語。これらの小説を一般の小説として読もうとすると違和感を感じるだろう。これは、半ばは澁澤一流の衒学趣味を楽しむ物語。すべてに典拠があるが、いつもの澁澤のエッセイと違っているのは、後の半分が縦横無尽に想像力を駆使した奔放な物語になっていること。しかし、そうは言っても澁澤の博覧強記を楽しむという点では変わらない。典拠そのものの、空間的、時間的な広さに、いつもながら驚嘆しつつ、物語としての荒唐無稽に夢想を馳せるのだ。そして、これこそがまさに澁澤を読む楽しみなのだから。
2014/11/05
syaori
エッセイとも物語ともつかないこの作品たちと何と呼んだら良いのでしょう。ルネサンスの画家ウッチェロ、蹴聖・藤原成通、ティムール、プリニウスなど作者らしいテーマをエッセイのような語りに乗って味わっているうちにいつのまにか美しい不思議な物語の流れに乗っているというふうで、次々に景色を変える万華鏡を覗くような、ゆらめく蜃気楼を眺めているような作者の作品を読む楽しさを久しぶりに満喫しました。花山院の頭風をめぐる『三つの髑髏』、鬼との双六勝負で絶世の美女をもらう『女体消滅』のほか『盤上遊戯』『蜃気楼』などが特に好き。
2017/11/16
メタボン
☆☆☆☆☆澁澤の博覧強記から織りなされる「アラベスク」な物語集。ちょっとまどろみたいような時間の合間に読むと非常に贅沢な気分に浸れる。面白い作品が多い中、特に日本の古典を題材として想像力を駆使した短篇が私は好きだ。軽やかに飄々と蹴鞠をする成通に心奪われる「空飛ぶ大納言」。鬼から与えられた美女の朱門が実体なのか幻影なのかたまらずに禁忌を犯してしまう「女体消滅」。頭痛の原因を前世の髑髏に求める「三つの髑髏」。藤原清衡に平泉を案内してもらう「金色堂異聞」。ダンスマカブル(死の舞踏)とマカベを重ねる「六道の辻」。
2018/11/18
双海(ふたみ)
第9回(1981年) 泉鏡花文学賞受賞。プリニウスを扱った「火山に死す」は実に澁澤さんらしいテーマだと思いました。その他では「女体消滅」が好みです。川端康成の「眠れる美女」を思い出しました。
2014/10/14
マウリツィウス
【澁澤龍彦「芸術発展理論」】集成論として束ねられた「ボルヘス」オマージュを想起するも実体的にはカバラ系譜ではなくグノーシス系譜、しかし明確に異なる点ではシェイクスピア権利を剥奪するアルゼンチン作家を吸収消化したことだろう。神話論=迷信化された異形存在を否定し尽くした澁澤は事実的に汎神論をも取り込んでいく。美学前提で構成された《哲学》が具象化した領域でもあり非・聖書モチーフを積極引用したこともまた見出すことが出来る。古典主義的世界像をも塗り替えていったボルヘス参照と引用は否定されるべき前提と踏襲をも遂げる。
2013/07/23
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