世界幻想名作集 (河出文庫 し 1-25)
世界幻想名作集 (河出文庫 し 1-25) / 感想・レビュー
袖崎いたる
合理化が世界を支配する、これは世界を日常化するとも言い換えが利くだろう。幻想文学はそんななかで、普段は見過ごす景観の一部や優秀な脳によって自動化されてる細部に異変が起こる〝かもしれなさ〟にビビる人間の情けなさの健在を突く。本作に収録されてる作品はどれも有名過ぎて逆に読まず過ごしてきた作品ばかり。その意味で幻想文学再入門的な一冊となっている。いろいろ収録されてるが…ぼくの琴線を痛切に弾いたのがカフカの『変身』だったのには苦笑。そうなることを信じていないが、そうなることが怖いことはわかる。――これが幻想文学?
2016/05/14
べりょうすか
読んでみたいけど難しそう、と敬遠してた作品がけっこうあった。これが読んでみたら意外と面白く、作品の後の解説も分かりやすくて良かった。なかでも、ウンディーネやスペードの女王、黒猫、が良かった。
2014/05/28
二笑亭
紀田順一郎、種村季弘、後藤明生、田中小実昌、中井英夫ほか抄訳ながら訳者陣のメンツが豪華な1冊。ゴーゴリ『鼻』は何度読んでも笑えるし、アポリネール『オノレ・シュブラックの失踪』は何度読んでも不気味な味わい。なぜ表紙がアルチンボルドなのかと思ったけど、巻末に収録された澁澤龍彦の「幻想美術の流れ」でふれられていた。本書のタイトルは『世界幻想名作集』なので、よくよく考えたら文学に限らない訳である。
2024/07/22
Mingus
どうやら過去に一度読んでいた?らしいのだが、本棚に積読されていたと思い手に取った本作。澁澤氏がカテゴライズした、"幻想文学"なるものを世界の文学から厳選しただけあって、サクッと読めるのに後味は濃厚。面白い。カフカの変身が大分要約されていて、他の作品もそうなのかなと思ったのだが、かなり体系的に効率良く面白い幻想文学を掻い摘むことが出来る。一番ありがたいなと思ったのは、作品ごとに解説だけでなく作者の生涯も丁寧に掲載されていること。個人的に好きだったのは、フーケのウンディーネ、プーシキンのスペードの女王。
2022/02/15
れどれ
幻想名作集とは銘打たれているけれど怪奇譚のほうがしっくりくる。有名高名な作品が揃い踏み。御伽噺の伝奇ぶりを人工性で統御、圧倒しようという力強い時代の気高さを実感する。
2017/06/26
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