魚のように (河出文庫 な 18-1 BUNGEI Collection)
魚のように (河出文庫 な 18-1 BUNGEI Collection) / 感想・レビュー
絹恵
若さゆえのまだ定まらない純粋性にやわらかく傷付けられ痛みを感じるのは、本物が含まれているからなのだと思いました。本当の嘘も水に書いたなら流せるだろう、その川に溺れそうになったとしても、笹舟に乗るより泳いでいたい、魚のように。そして水に浮かべた花にもう涙を流さなくていい、なぜなら花盗人は罪にはならないのだから。
2014/04/29
lisa
十七歳の時の作品で、書かれたのは三十年以上も前。高校時代のあの自分も友達も異性も同性もないまぜになって距離感がなくなったような、かと思えば突然遠くに感じてしまったような、そういう薄紙に包んだ何かを思い出させてくれた作品だった。高校生の私が読んだら大絶賛した事だろう。
2024/02/08
neputa
著者のデビュー作となった表題作「魚のように」と「花盗人」を集録した短篇集。いずれも青春群像の物語。 二編通じて、剥き出しのヒリヒリとした感覚が常に横たわっているのだが、不思議と青春の暗さを感じることがない。 著者があとがきで故郷の高知県中村市で育ったことの重要性を示すとおり、川の清流のように甘く清々しいこの感覚は、舞台となる土地の強い影響がうかがえる。 痛みと脆さを抱えながらものびのびと生きる登場人物たちに心が洗われた。
2015/03/03
kolion
思春期の切立った感性がすがすがしい。よくできた姉とできの悪い弟である自分。姉が家を出てから家族は壊れ、自分も家を出る。家族を大切に思うものの血のつながりに執着はない。母親の無償の愛がつくりあげていた娘への期待をある日姉はあっさりと裏切っていく。常に自分を許してくれる君子さんの心の美しさに憧れながらも、そのあまりの綺麗さに無性に苛立ってしまう姉の気持ちも凄くわかる。人は完璧でありたいと思いながら完璧であるものを嫌い、優しく穏やかでありたいと思いながらそうできる人を傷つけて自分も傷つくのだ。
2015/06/13
とし
中脇初枝さんということで、手に取る。文庫だったので解説に助けられた読み込みだった。先達の言葉は物語を深めるものだ。 川を上流に向かい歩きながら、失踪した姉の生活を思い出す弟。出だしの文が上手かった。”巣離れの物語”「花盗人」家族の中で浮いていると感じた女子中学生。求められる行動ができない自分、求められたものたちへの憤り。盆栽はそのモチーフかあ、そうだなあ。
2012/10/06
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