暗黒のメルヘン (河出文庫 し 1-29 澁澤龍彦コレクション)
暗黒のメルヘン (河出文庫 し 1-29 澁澤龍彦コレクション) / 感想・レビュー
棕櫚木庵
日本の16人の作者から1篇ずつ,16篇を収める.特に良かったのは,泉鏡花「龍潭譚」,坂口安吾「桜の森の満開の下」,日影丈吉「猫の泉」.いずれも,以前に別の所で読んでいたけど,再読してもやっぱりいい.倉橋由美子「恋人同士」は,似た話でもっといいのがあったような気がする.安部公房「詩人の生涯」は,寓意が込められているのだろうけど,それは置いといて,春の雪解けが非常に印象的.この作者,理屈っぽいという印象(失礼,誉め言葉です)があるけど,いい童話書くんじゃないだろうかと,変なこと思ってしまった.→
2021/06/28
双海(ふたみ)
メルヘン。しかも”暗黒”のメルヘン。メルヘンといえば、ドイツ文学が本場であって、ノヴァーリスの定義やらハイネのエッセイやらが想起されるわけですが、本書ではそんな堅苦しいことは止めにして、もっぱら幻想的な非現実の物語、それも”薔薇色”ではなく”暗黒”の色調を帯びた物語と規定されています。そしてその基準に則って澁澤が撰んだ16篇の傑作短篇・・・!ノヴァーリス:「メルヘンは文学(ポエジー)の規範(カノン)である。あらゆる文学はメルヘン的でなければならぬ」
2016/07/18
pico
1Q84で『猫の泉』を想起したので、久々にひっぱりだしてみたら、ずるずるとっぷり澁澤の暗黒の迷宮にはまってしまった。豪華に盛られた暗黒の結晶を吐きながらのみこむのみこむ。満腹の果てに残るはいいようのない恍惚というメルヘン。泉鏡花「龍潭譚」、坂口安吾「桜の森の満開の下」、石川淳「山桜」、江戸川乱歩「押絵と旅する男」、夢野久作「瓶詰の地獄」、小栗虫太郎「白蟻」、大坪砂男「零人」、日影丈吉「猫の泉」、埴谷雄高「深淵」、島尾敏雄「摩天楼」、安部公房「詩人の生涯」、三島由紀夫「仲間」、椿実「人魚紀聞」、澁澤「マドン
2009/07/18
花乃雪音
澁澤龍彦が選出した十六篇の幻想文学のアンソロジー。大坪砂男の小説を読もうと思い検索したら本書がかかったので手に取る。まだ知らぬ名作に出会うというより江戸川乱歩『押絵と旅する男』夢野久作『瓶詰の地獄』など自分の好みを再認識する読書となった。また、澁澤が収録作品の解説で泉鏡花を「古めかしい新派劇の原作者のイメージを払拭して、夢や超現実の言語体験という稀有な世界に踏み入った新しい鏡花像を打ち樹てなければならない」と語っており、当時の鏡花の評価に時の移り変わりを感じずにはいられなかった。
2020/06/23
びっぐすとん
澁澤が選ぶ幻想アンソロジー。著名な作家の作品もあるが、今では知られていない(私だけ?)作家の作品もあり、内容とともにマニアック。幻想文学って作家によってもだいぶ違う幅の広いジャンルなので、正直好みじゃなかったり、「これも幻想?」と思うものもあったが、この本を読まなければ知らないままだった作家を知れたのは収穫。最近の小説に慣れている身には、昭和の文章ってやはりどこかが違う。言い回しが冗長だったり、一文が長かったり。比較すると最近の文章はどの作家でも簡潔だと思う。現代人は忙しいから?日本語の変遷を感じた。
2020/03/15
感想・レビューをもっと見る