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ユルスナールの靴 (河出文庫 す 4-1)

ユルスナールの靴 (河出文庫 す 4-1)

ユルスナールの靴 (河出文庫 す 4-1)

作家
須賀敦子
出版社
河出書房新社
発売日
2010-08-03
ISBN
9784309405520
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ユルスナールの靴 (河出文庫 す 4-1) / 感想・レビュー

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ω

フランス人女性作家ユルスナールの人生とご自身の海外生活を行ったり来たりしながら何かを得るといった作品。 私にこの本を紹介してくれた人生の大先輩は、 「私小説と随筆の間の文体で、静謐な孤独感にひたひたと心が修復されていくんです。読むことは心理療法に近いと思います。箱庭作りみたいね。」と仰った。 私は読むスキルが足りず修復はされなかったけれど、ヨーロッパの美しさと須賀先生の凄みを感じたω!

2022/06/02

aika

終生世界中をたゆたい続けたフランスの作家ユルスナールと須賀敦子、ふたりの軌跡に、暗闇を手探りで歩きながら自分で自分の生き方を選ぶことの孤独と幸福を見たようです。これからどう生きるべきかを追い求めてヨーロッパにやって来たのに、焦燥感ばかりが募る留学時代の記述は、若い時ならではの「ままならなさ」が胸に迫りました。友人ようちゃん、パリでおせっかいを焼き続けてくれたシモーヌなど須賀さんが忘れられない人たちとの記憶が下支えしているユルスナールの小説と人生の物語を読むと、私自身も支えられているような心地になります。

2022/10/20

aika

フランスの作家・ユルスナールの作品と足跡、それをたどりながらご自身のこれまでを回想する須賀さん、ふたりの女性の苦悩と歓びがリンクしながら漂うこの筆致は、須賀さんにしか書けないと思いました。須賀さんが美術館で見た1枚の絵画から思いを跳ばして、ユルスナールの『黒い過程』を宗教的背景から解釈していく場面は、未読の私でも、信念の生き死にを賭けたその厳しい世界に足を踏み入れてしまったような緊張感がありました。須賀さんが履いた靴が、人びとと文学の軌跡をもたらしてくれ、私にぴったりと合う靴へと導いてくれるようでした。

2019/07/14

aika

生前最後の作品なのに、難解で困り果てた前回。今回は冷静に、そして大切に読めました。40日の船旅の果て、自分を受け入れてくれるはずか、孤独と挫折の入り混じる複雑な思いを残してきたパリ。そのパリに戦渦の為に二度と戻れず、世界各地を漂流しながらフランス語で生き続けてきたユルスナールの作品と生涯が、須賀さんにたどられることによって、二人がまじわり、呼応していく。その瞬間ごとに、迷いながらも歩き続けた生き方が須賀さんの中で肯定され、そして生まれたこの作品こそ、須賀さんの足にぴったり合った靴なのだと信じたいです。

2020/08/17

harass

書名や著者名に覚えがあり正直安かったので購入。  驚いたのが実に品がある文章だなあと。自分としてはあまりエッセイは読まないが、けっこう売れた若手女性の『ホンネ』トークのような、欲望とかをむき出しにしたものを念頭に置いていたせいもあり、正統的な知識人の文章とはこういうものだわと、抑制のある嫌味のない語りをしみじみ味わった。思いがけない読書であり非常に感じ入るところがありこの著者の他の本を読んでみたいと思った。また著者の晩年の著作でもあり、老いというテーマを意識する年齢に自分も差し掛かっているのかとも。

2014/06/26

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