死亡遊戯 (河出文庫 ふ 4-1 BUNGEI Collection)
死亡遊戯 (河出文庫 ふ 4-1 BUNGEI Collection) / 感想・レビュー
hit4papa
『死亡遊戯』は、風俗のキャッチの男のアブナイ話。そして、同時収録された『DS(ドミネーション・サブミッション)』は、変わった性癖の男に執着されるアブナイ話。要するにアブナイ話二作品。J文学という徒花の一冊ですね(今もってJ文学ってハテナ?なのですが)。『死亡遊戯』は、多国籍な暗黒街に息づく男と女の、性欲と暴力がぷんぷんと匂い立ちます。面白いかどうかは別。『DS』は、主人公が偏執的に絡まれて、徐々に現実感を喪失していく姿が描かれます。作品としてはこちらの方が、断然、面白いですね。ラストも文学的で好み。
2020/08/12
碧海
視覚はネオンで、嗅覚は香水と悪臭で、聴覚は喧騒で、猥雑な街を描き出す作品です。そこに生きる人々は暴力的で欲に忠実ですが、表題作にももう一つの収録作「DS」にも不安定な空虚さがふと広がり、現実にまで滲み出して境界を失わせるような感覚が漂っています。放っておくとすべての存在が本物かわからなくなってしまうから、実態ある肉を求める。それでも認識する自分も肉でしかなく、他人がくれる刺激は自分の中の不安を超えてくれない。激しく疾走感ある文は、己の外側と内側を繋ぎとめるため、絶えず信号の走る神経を表しているよう。
2014/11/29
踊る猫
読み返して、やはり藤沢周という作家は今だからこそ評価されるべきなのではないかと考えてしまった。かつて読んだ時はピンと来なくて、「J文学」の看板で持ち上げられているだけのハッタリなのだろうと舐めて掛かってしまったのだけれど、短文を畳み掛けることに依って生まれるピリピリした緊張感はクセになる。現代風俗を過剰に取り入れながらイヤミにならない、そのソリッドな感覚は村上龍氏や阿部和重氏の作品にも似ているようで似ていない。いつの頃からかフォローしなくなった作家なのだけれど、これは迂闊だったと反省させられた。素晴らしい
2017/01/30
harass
歌舞伎町のポン引きが主人公でザラザラした猥雑な世界を展開する。純文学でやる意味があるんかな?と読んでいたが思いがけない展開・モチーフがでてきてちょっと個人的にツボった。短編二編を収録している。もう一つも予定調和から逸脱するのが面白い。
2013/05/23
Ichiro Toda
藤沢周氏のデビュー作品の改題とDSの二編が収録されている。どこに書いてあったか忘れてしまったが、バロウズ、ブコウスキーを超える大型新人との記述はあたってはいないものの、説得力がある。確かにある部分では、文体という形式では似てる部分が見られるのかもしれない。一読して感じるのは圧倒的な文章の締りと心理描写の排除、そして不自然なまでのピントボケする像だった。物語は流れては行くし、むしろ急流に感じる部分もある。ただそれは像を結ばずにこぼれ落ちていき、ふと気づくと物語から取り残される。ある意味実験作なのかなと思う。
2015/08/27
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