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雨更紗 (河出文庫 な 7-22 BUNGEI Collection)

雨更紗 (河出文庫 な 7-22 BUNGEI Collection)

雨更紗 (河出文庫 な 7-22 BUNGEI Collection)

作家
長野まゆみ
出版社
河出書房新社
発売日
1999-10-01
ISBN
9784309405971
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雨更紗 (河出文庫 な 7-22 BUNGEI Collection) / 感想・レビュー

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ちょろこ

酔わされた一冊。どストライクな世界。彼岸と此岸どちらにもギリギリ足がついていないような世界に心は放り込まれた。まるで薄く仄暗く煙る世界。微かに見える少年達の蒼白い肌。そこに数々の色彩が時折目に飛び込んでくるかのような瞬間を、手首を掴む、喉に触れる朱唇のひんやりとした感触を、雨が奏でるいくつものリズムを、更紗、紅球(ほおずき)、漢字が醸し出す圧倒的な言葉の美を味わい尽くした。なまめかしく光る肌。玲、哉、どちらがどちらの心を呑み込んだ?曖昧な感覚、雨に濡れる草が永遠に揺れるような感覚にひたすら酔わされた。

2021/06/14

ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中

にじんでかなしい、どこまでも冷たい雨が降る。夜半池に溢れる沢瀉、闇がどこか薄明るいと思ったら白花が反射していたのだった。夏越しの祭りの不穏な響き。池をみつめて雨にうたれる、浸ることもできない私は臆病者です。そしってくれたらいっそ楽なのにとまた他人のせいにして。すべてを流して、罪さえ隠して消し去って。雨に浸して更紗が冷えきったら、どうしようもなく温もりを求めてしまう頼ってしまう。そんな資格などないとかぶりをふるその頸ごと、いっそ奪うほどに強く抱いてください。浅ましいねがいを、どうか、きき届けて。

2020/06/20

chantal(シャンタール)

時代は昭和の初め頃だろうか?映画を見ているような感覚。静かに雨がそぼ降るような淡い淡い画面。螺鈿を施した青貝擦の茶碗に落ちる雨音は鈴の音のように美しく響く。誰もがその輝く貝のような美しい肌を持つ少年に惹かれる。でもその少年の心を病ませたものは一体何であったのか?古い家のしきたりか、旧家故のおぞましい過去か、それともただ単に母への子供じみた独占欲か。小糠雨に濡れる景色を、すりガラスの向こうにそっと見るような朧げで、儚げな物語だった。

2020/08/23

yn1951jp

昔、夏越しの夜宮に天満宮の池で溺死した祖母の弟御幸、彼を助けたという玲、雨のまちを彷徨う従兄弟の哉、そして存在しない弟、彼らは切妻破風門の旧家、時空を超えて草木の蔓延る草迷宮の屋敷に住む永遠の少年である。少年の肌理は降り続く雨の中で夜行貝の滑らかさに白く照り、男も女も、周りの人すべてを、家族をも誘う。17、8の娘にもどる祖母、雨の天満宮でまつ母、画家の情婦安、草迷宮の屋敷の離れで母たちは少年を抱き、懐妊する。少年は死んで湯灌をされる夢を見る。雨音は夜宮の神楽鼓のように一晩中打ち続ける。鏡花の世界のような。

2015/07/18

なつ

題名から和風な雰囲気がとても感じられ、「更紗」という響きがもうきれいだと思います。来月は梅雨なので一足先にその匂いを味わえました。美しくも閉鎖的な街が舞台。哉(はじめ)と従兄の玲(あきら)、その家族を中心に謎が深まりつつフワリフワリと漂う文体は、長く降る雨で目の前が見えなくなるのに似ている。近いようで遠くに行ってしまう。全ては幽玄に。

2020/05/12

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