澁澤龍彦初期小説集 (河出文庫 し 1-44)
澁澤龍彦初期小説集 (河出文庫 し 1-44) / 感想・レビュー
(C17H26O4)
『撲滅の賦』ちょっと虐めてみたくなっちゃうわ。わたしよりずっと年上なのにかわいくて。「あなた、お魚に似ていると思ったら、それほどじゃないわ」「金魚の方がよっぽどお魚に似ているわねえ、お魚さん」愛する美奈子が絵画制作のために凝視している金魚との密通(なれあい)への悶絶。美奈子に「お魚さん」と可憐な愛称を与えられた金魚に対する嫉妬。ねえ「お魚さん」って呼んであげましょうか。嫉妬が詠う撲滅の賦。万華鏡的セレナーデ。宇宙の崩壊スケルツァンド。金魚を殺しても無駄よ。だってあなた嫉妬しちゃうもの。硝子鉢にさえ。
2019/09/11
コットン
『犬狼都市』を読むのは2回目だけれど今読むと幻想的なのはもちろんですが美術的な描写もあったのだと感じる。同人誌で発表した『錬金術的コント』などは博識な部分で読ませる。
2014/07/20
長谷川透
澁澤初期の短篇集。初期作品だから澁澤の小説スタイルの大枠は当然ながら固まっていないが、小説の細部や、テクストから溢れ出るものには、澁澤龍彦の匂いがする。小説家として『高丘親王航海記』という澁澤龍彦作品の名刺代わりの一冊とも言える作品を晩年に完成させたが故に、彼の書く小説に対する既成概念が出来上がってしまっていた。僕のような澁澤龍彦の浅い読者は、本書を読んで、澁澤作品への偏見をぶち壊すのがよかろう。繰り返しになるが、小説の題材は晩年の澁澤からは意外と思えるものであるが、作品としては完成しているものばかりだ。
2013/04/18
片瀬
『犬狼都市』、『陽物神譚』等、類い稀なる眩惑と悦楽が織り成す9篇。閉じるたびに、まだ読みたいと躊躇ってしまう、こんな本は初めてです。著者のフランス文学、哲学、神話等の多様な分野における深い造詣や、あたたかい余韻を残す肉感と陶酔を紡ぎ出す描写に、すっかり射竦められました。初期の小説集ということで、まだまだこの著者の作品を楽しめるのだと思うとキャーって感じです。欠損への偏愛!迸る鮮血の饗宴!そして、ふたなり!…こういうことを書いているとき、自分は幻想小説が好きなのだな、と思います。駄目ですか。
2014/11/21
メイ
面白かった。撲滅の賦、エピクロスの肋骨、犬狼都市、人形塚が好み。特に犬狼都市の描写が凄い良かった。翻訳とかばかりで純粋に小説ってあんまり無いからもっと読みたい。
2022/07/27
感想・レビューをもっと見る