さだめ (河出文庫 ふ 4-6)
さだめ (河出文庫 ふ 4-6) / 感想・レビュー
南雲吾朗
AV女優スカウトマンの話。万人には受け入れられない内容なのかもしれない。しかし、藤沢氏の描く退廃的な世界観は一読の価値がある。女性を商品としてしか扱わなかった男が、商品として女性を扱えなくなってくる精神的な疲労。絶望しかない女優が希望という言葉を吐く。「希望…?いい言葉だ。いい言葉だが、世の中が消滅しない限り、そんなものは出てこない。」物語全てにおいて救いがない。それでも癖に成る程ハマってしまうのは、文字を追っているだけなのに、川の腐臭まで実際に感じられるような描写力のせいなのだろうか。⇒
2019/02/12
hit4papa
デビューしたAV女優とスカウトマンの、実に辛気臭い物語です。”らしくなさ”で人気を得ていく女優に対し、徐々にビジネスを超えた思いを抱くようになるスカウトマン。二人の、恋愛小説とまではいかない、絶妙な距離感はリアルでしょう。ただ、女優の幸福とは言えない家庭環境や、徐々に蝕まれていく精神状態は、ありがち以外の何ものでもありません。”壊れ”がないと物語としては弱いのは分かるのですが。AVならではのシーンや、下卑た物言いが満載で、業界の真実を入れ込んでいるのでしょうが、若干、辟易としてしまいました。
2020/11/21
ω
何でこれ、こんなに登録数少ないんだろ('ω')??いい感じの藤澤先生3冊目にしてかなり読みやすい作品♫ 主人公はAV女優のスカウトマン、21歳のパッとしない女からスカウトを受ける旨の電話が鳴って始まるストーリー。正気を保て、狂気を、保て。 凄く良かった( ^ω^ )
2020/06/07
Emperor
「狂った女性が出てくる小説が好き」と言ってしまうといささか誤解を招きそうだが別に語弊があるわけでもないので訂正はしない。ぼくの大好きな作家、中村文則さんがどれほど藤沢周さんの作品に影響を受けているかが垣間見える一冊。
2017/03/10
harass
主人公はアダルトビデオのスカウトで、新たにスカウトした女優が評判になる。彼も惹かれていくが、彼女は狂気を孕んでいて…… この作家の本を読み続けているが、正直一般にはどうかと思うようなものばかりだ。今回の小説も例外ではない。題材の取材は良く出来ていると思うが、登場人物が破滅型やグロテスクな性格なものが多く、読者の共感をはばんでいるようだ。話の展開も無造作に感じることもよくある。それでも自分が読む理由を考えてみると、文章のきらめきを感じる瞬間があるからか。この文体が好みだからだろう。
2014/02/01
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