夢の宇宙誌 〔新装版〕 (河出文庫)
夢の宇宙誌 〔新装版〕 (河出文庫) / 感想・レビュー
メタボン
☆☆☆★ 評論に近い歯ごたえのあるエッセイ集。キリスト教の歴史や、美術史に造詣が深く、特に中世ヨーロッパについての博学ぶりは唸らされる。「アンドロギュヌスについて」が面白かった。
2022/05/26
安南
神聖ローマ帝国を舞台にした小説を読んでいて、ルドルフ二世の蒐集品について書いてあったと思い出し、再読。自動人形やホムンクルスについての考察「玩具について」は当時のプラハやルドルフ二世の宮廷、そこに出入りしていた芸術家、錬金術師など、当時の芸術、科学、宗教に境界の無い混沌とした空気感が感じられて楽しめた。「世界の終わりについて」では、異端諸派の性愛的原理を検討していく件が興味深く、おもしろかった。
2013/04/22
白義
アンドロギュヌスのイメージに秘められた、全体性願望、終末論の中のエロスまで、魔の文化史から自由に題材を選び、濃い随想を繰り広げ澁澤ワールド全開。どこからこんな話を仕入れていたのというくらい話は自由自在に飛び、それ自体が妖しげなシンボルとして聳える名エッセイ揃いだ。ルドルフ二世とアルチンボルドのエピソードが実に面白い。どれも他愛なくトリビアルに見え、まただからこそいいのだが、その他愛なき対象が実は人類の普遍的観念と通じるものだと感じればさらに深みにはまっていく
2013/02/21
歩月るな
その後のエッセイのスタイルを決定づけた出色の一冊。書かれた当時の六十年代に既に世紀末をそして現代の五十年後、六十年後を見据えた渾身の筆が冴え渡る。今で言うといかにも表現がアレだなあって所も逆に清々しいとさえ思う。編年の全集でもかなり古い位置にある本書は、『胡桃の中の世界』『思考の紋章学』に繋がっていく。これだけ朗々と語られていく所の論旨が、最終的にサドに繋がって幕を閉じて行くのが演出的に最高過ぎて、その点でも実にファンタスティックなのだがどうだろうか。訳出した『さかしま』等も当たってみなくてはならない。
2016/01/30
sigismund
自動人形、錬金術、アンドロギュノス……人間のうちに眠る小宇宙を克明に描き出すエッセイ。プラトンやフロイトによるノスタルジックでエロティックで切ないアンドロギュノス論は読んでて心躍るものがある。女性と男性という切り離された「人間」という二元的宇宙。そこから澁澤が導く「性とは(中略)二元的になった生命の一つの表現形式」というすっきりとした帰結と「性を生殖に奉仕させる理論の、ブルジョワ的俗悪さよ!」の叫びには溜飲を下げた心地がした。
2014/03/30
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