溺れる市民 (河出文庫)
溺れる市民 (河出文庫) / 感想・レビュー
佐島楓
「普通」に生きている人間でも、一皮むけば絶えず妄想に溺れており、現実と妄想のバランスをとりながら過ごしている。そのあわいを踏み越えたが最後、奈落の底に堕ちてゆくのだ。
2017/09/29
ちぇけら
たいせつな人をおもいながら、となりで屈む女性のゆるんだ胸もとを凝視する。罪悪感はいつもブルーであるがレンジでチンしたコンニャクのように人肌の温もりがする。屹立するペニスに血液が凝縮して亀頭がズボンを突き破ろうと画策しているのは愉快でならない。「射精は快感の敵なのかもしれない。オレは射精に邪魔されて、真の快感を味わえずにいるのだ。オレは射精の向こう側に突き抜けるべきなのだ。」一週間溜め込んだ精液のように思弁と言葉が雪崩れ込んでくる瞬間に恍惚としてしまうひとは、すっかり島田雅彦に取り込まれてしまっているのだ。
2019/12/09
ちょん
綾辻行人さんの深泥池シリーズにも近い感じを抱いてたのですが、それよりもダーク。癖が強い(笑)「悦楽と絶望の世界」と紹介にありましたがこんなに分かりやすい説明ない✨ずっと読んでたくなる話です。
2021/10/08
桜もち 太郎
初級篇、中級篇、上級篇と妄想は深まっていく。良かったのは上級篇の「オナニスト一輝の詩」だ。バイアグラを飲んでしまった少年が治まらず「これからは禁欲と勤勉に励むので、どうかこのピノキオの鼻を縮めてください」と両手を合わせる場面が笑える。しかし少年は誇り高かった。自ら「俺は気高いオナニー・アーティスト」と宣言するする少年に勇気をもらえた。と、いうがこの作品を含めて他の物語も文学なのだ。決してふざけた物語ではない。もう一度言う、れっきとした文学なのだ。劇物に触れたような読書だった。
2022/11/25
giant_nobita
どの作品もモチーフが奇抜でバラエティに富んでいるが、オチが投げやりなので完成度の高い短編を読む充実感は得られなかった。「オナニスト一輝の詩」は島田雅彦のオナニーを覗き見ているようなドン引き感が味わえる上、迷言のオンパレードでおもしろく読めた。「オレはついに未知の領域に踏み込んだ。きょうからアナルの地平が開けてゆくのだ。」
2018/03/10
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