蹴りたい背中 (河出文庫 わ 1-2)
蹴りたい背中 (河出文庫 わ 1-2) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
『インストール』から3年。綿矢リサが帰って来た。一層に進化と深化を加速させながら。「さびしさは鳴る」―冒頭の1文からしてこれだもの。聴覚、視覚、触角、嗅覚、味覚をいっぱいに開いた表現。自己と他者を(もしくは他者集団を)見据える、透徹した自意識。「私」は、単に疎外される者ではない。たまたま持ってしまった、強い感受性によって自ら立つしかないのだ。そして、「私」のにな川に向ける視線は、これまでにどの作家も気がつかなかった感情であり、表現だ。また、所々に太宰を思わせるような表現も散見され、親近性を窺わせる。
2012/08/16
zero1
間違いなく、ある年代にしか書けない文章。「インストール」からリズムはあった。日常を鋭く切り取っており、再読でもその輝きは失われていない。芥川賞を史上最年少の19歳で受賞したことで知られる作品。高1の初実はクラスで「余り者」だった。もうひとり、にな川も同じ状態だったが、彼には夢中になっているタレントが。解説は斎藤美奈子。主人公は孤立することで五感が肥大化、「蹴る」は性的衝動と述べている。批判もあるが、私はこの作品を支持する。芥川賞と直木賞の区別など関係ない。小説にとって大切なのは面白いか否かだ。
2019/09/19
さてさて
人は孤独になりたいと思うときがある一方で、自分が孤独な存在であると知られることを恐れる生きものだと思います。それ故に、”分けられる側”の意思に委ねられる”分けられ方”の先に待つものを恐れる感情は誰にでもあるのではないでしょうか。誰もが感じているものの中に、普段気づかないでいること、気づけないでいること、そんな淡い感情を気づかせてくれたこの作品。個性豊かな独特のリズム感の中でサラッと読ませる鋭い表現の数々と、当時19歳の綿矢りささんだからこそ書けた瑞々しい表現の説得力にとても魅了される、そんな作品でした。
2021/04/25
hit4papa
自らが招いた孤独にとらわれてしまった女子高生の物語です。孤独に直面して、気持ちになかなか整理がつなかい主人公の真っ直ぐさが、愛おしくなってしまいます。”さみしさは鳴る”など本作品には作者の独特の表現方法が見られます。平易な言葉の組み合わせで、感情の広がりを表すことができる19歳(当時)の綿矢さんおそるべし。
2016/08/24
Die-Go
図書館本。クラスからはみ出している二人の男女の高校生。その男の背中を無性に蹴りたい女の子。なんだか何を言いたいのかわからずなまま読み終わってしまった。文章も言われてるほどこなれていない。★★☆☆☆
2016/01/19
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