フルタイムライフ (河出文庫) (河出文庫 し 6-5)
フルタイムライフ (河出文庫) (河出文庫 し 6-5) / 感想・レビュー
ミカママ
美術系大学を卒業し、思いもよらず制服を着る「OL」となった春子。恋愛の方もイマいちパッとしない…けれども春子はいつだって前向きだ。会社は面白くもないけれど、仕事は楽だしなによりお金になるのがうれしい。そんな春子の新入社員一年目を綴った作品。柴崎さんの小説は叙述式とでもいうのか、主人公の行動や心情を淡々と語っていく方式。ほとんどのページが真っ黒(余白というものがない)(笑)自身の新入社員時代をなま温かく思い出しつつ、春子は偉いなぁと思う。健気に生きている彼女に、この先いい出会いがありますように。
2022/12/31
ふじさん
図書館本。読んでいて、自分が50年前に大学を出て社会人1年目の時の大変さを思い出し、懐かしい気持ちを持つて読むことが出来た。本当に1年目は、右往左往の毎日で、同級生の同僚との土曜日の飲み会がせめても救いだった。主人公は、美大のデザイン科を出て、機械関係の会社に入社し、やりたい仕事ではない事務職に就いて1年目、仕事も恋も思うようにはならない。そんな彼女は、会社勤めを否定しないし、彼女なりに好きなようだ。登場人物の個性は際立たないが、個々の関りの中では、温かい気持ちにさせられるシーンもそれなりに楽しめた。
2024/11/02
アマニョッキ
柴崎さんのお仕事小説。こういう事件はなにも起こらないけれど淡々と面白いもの大好き。あと、今日マチ子さんの表紙がとてもかわいい!持ってるだけでテンション上がる素敵な作品。職場で四季を感じるってすごくよく分かるし、切り取る目線がとても好き。わたしもシュレッダーはじめてみた時は衝撃だったなぁ。
2020/11/15
翔亀
「春の庭」で感銘を受け、たまたま手持ちの本を通勤の友に携える。私の場合、酒が入るとなかなか読めないのだが、この作品に限ってはイケルではないか。なるほど、図らずもたまたま受かってしまったメーカーに目的意識もなく入社してしまった新入社員の、<何も起こらない>一年が描かれるだけの作品だ。ストーリー的に何も起こらないだけでなく、後年の作品のような小説技巧(視点の移動/時間の流れ等)も何も感じさせない。にもかかわらず、読ませるのはなぜか。作者自身の機械メーカー勤務の経験を生かしているのだろうが、↓
2014/09/17
あんこ
誰かの、あるいはわたしの日常を俯瞰しているような気になりました。ひとつひとつの描写、やり取りが細かい。日常を日常のままに描いていて、(こういった小説ははじめて読むので)こんなに俯瞰して描けることがすごいなあと思いました。確かに、淡々と始まることから、最初のうちは主人公や周りの人たちにも「個人」というものを感じなかったのに、次第に浮き彫りになってくるかんじ。ドラマチックではない、現実としての日常。これからも続いていくのだなあとぼんやりと思いました。
2015/01/11
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