KADOKAWA Group

Facebook X(旧Twitter) LINE はてブ Instagram Pinterest

完全版 佐川君からの手紙 (河出文庫 か 1-1)

完全版 佐川君からの手紙 (河出文庫 か 1-1)

完全版 佐川君からの手紙 (河出文庫 か 1-1)

作家
唐十郎
出版社
河出書房新社
発売日
2009-05-30
ISBN
9784309409573
amazonで購入する

完全版 佐川君からの手紙 (河出文庫 か 1-1) / 感想・レビュー

powerd by 読書メーター

遥かなる想い

第88回(1982年)芥川賞。 フランスでの実際の事件をもとに、唐十郎が 創り出したこの作品…物議を醸したらしいが、 パリの女性に対する日本人男性の屈折した 感情が上手く表現されている。 「白い」人であり、自分より 大きな女性への あこがれは、当時の人々の秘められた感情なの だろうか。よくわからなかったと言うのが 実感だが、演劇を見るような印象の作品だった。

2017/11/04

ヴェネツィア

1982年下半期芥川賞受賞作。芥川賞を新人作家の登竜門とするならば、これほどに新人離れのした新人も珍しい。確かに小説の分野に関してこそは新人であったかもしれないが、唐十郎といえば状況劇場(現在は唐組)を率いて、日本の演劇界を席巻した当人なのだから。その存在感はもう圧倒的である。さて当該の小説だが、どこまでが本当でどこからがフィクションであるのかが極めて曖昧である。迷妄模糊としているのだ。最初の佐川君からの手紙はあるいは事実であるのかもしれない。しかし、物語が進むほどに小説世界は「妖しく」変容して行くのだ。

2014/03/01

absinthe

佐川君とは、あの佐川事件の殺人鬼。著者は映画化の依頼を受けたようだが、フランスでも佐川との面会は果たせず。虚実織り交ぜて当時の様子を描くのだが。これはドキュメンタリではない。記述は半分以上が創作のようだ。著者は佐川君の独白ともいえる文書に「自己完結している」と感じ、素直に実像を探ろうとうはせず、別の表現方法を模索したようだ。absintheには佐川の言い分は芸術ぶったような身勝手なものに見え、直接対話して何か得られるようには思わなかった。著者も同意見だったのだろう。

2024/08/06

Y2K☮

再読。黒いノンフィクションと紅いフィクションが混ざった戦慄グラデーション。実際にパリで猟奇的な殺人事件を起こしたあの人と手紙をやり取りしていく中で、唐さんの誤読故の妄想と記憶に眠る祖母のイメージが現実に接ぎ木され、斬新な花を咲かせていく。著者にとってはカニバリズムさえも圧倒的ではなく、単なる戯曲や小説の糧なのだ。架空の人物が現実に影響を及ぼし、巡り巡ってある人を入院させたりもする。げに恐ろしきは妄想の破壊力。ご注意遊ばせ。ところで人形師の四谷シモンさん、実名で登場しているけど大丈夫なのかな。興味あります。

2016/03/19

sputnik|jiu

パリで起きたという実在のカニバリズム事件に材をとった表題作をはじめ、主人公の祖母の具象的なメタファー(?)である「K・オハラ」を妄想の取っかかりとして推進していく「誤読」の物語群。どこまでが事実で/どこからが小説なのか、あるいは、どこまでが妄想に基づく事実で/どこからが妄想に基づく小説なのか、その境界の規定が、著者の意図によるものかどうかは分からないが、とにかく非常に曖昧模糊としている。

2013/05/09

感想・レビューをもっと見る