疑惑---推理小説傑作選 (河出文庫 お 21-1)
疑惑---推理小説傑作選 (河出文庫 お 21-1) / 感想・レビュー
不見木 叫
段階式の構図転換が秀逸な「春の夜の出来事」・ロジカルなリドルストーリーの「緑の自転車」が個人的ベストです。
2015/08/16
koji
50年以上前の作品。大岡さんは、無類の推理小説好きらしく、本作も古今東西の推理小説から得られた着想をもとに、その透徹した観察眼で推理の醍醐味を描きます。寸評です。春の夜の出来事:憎悪は自己を苛む、真昼の歩行者:刑吏と犯罪者の同一の精神構造、疑惑:推理作家の優雅な生活、雲の上の呼び声:死体消失の謎解き、緑の自転車:怪しい状況証拠だらけでもピースが組み合わされない不条理、夢:夢とは秘めた願望の実現、夕照:人智をもって究め尽せない人生、シェイクスピア・ミステリ:シェイクスピアはマーロウか、あなた:復讐とトリック
2018/05/21
さっと
アンソロジー『文豪のミステリー小説』に入っていた「真昼の歩行者」がおもしろかったのでこちらへ。推理小説とうたっているが、スッキリと解決するもの(はっきりと犯人が提示されるもの)は案外すくなく、そういう作風なのかと思う。被害者の遺体消失と関連する殺人事件によって真相が二転三転してゆく「雪の上の呼び声」、高所恐怖症を素材に異国で仲違いしてしまう友人同士の心理を描いてどこかユーモラスな「夢」が良かった。まさしく推理小説って感じの前者と、そうでもないじゃんという後者とさまざま味わえる。
2022/02/13
あ げ こ
殺人事件と言う、あまりにも非日常的な局面に際して人間が見せる、愚かしくも無防備で、素朴な表情の数々。事件の凄惨な様相や、解決には至らぬ事件の不条理な結末から滲み出る人間の卑劣さ。しかし洒脱な文体は、糾弾と言う、安易な道を走らない。むしろその卑劣さを、人間が矮小であるが故に生じるおかしみ、或いは悲しみとして、ありのままの、人間の当然の姿として、冷静に描いているように思う。すっきりと事件が解決されないもどかしさ、事件への皮肉が明らかにする人間の滑稽さ…その手触りは何とも親しみ深く、大変好ましい。
2014/07/13
kanamori
☆☆☆
2011/10/09
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