なぜ人を殺してはいけないのか? (河出文庫 な 25-2)
なぜ人を殺してはいけないのか? (河出文庫 な 25-2) / 感想・レビュー
mana
大学図書館本。「なぜ人を殺してはいけないのか?」という問いを持つ時点で、そういう危険思想や欲のようなものが根底にあるという点や、そもそも問いを持たないことが一番良いという点には納得。哲学者の議論はこういう次元なのかと面白くはあるけども、あまり嚙み合っていないように思えて、飲み込めず…。法律があるからといって、それが抑止力になるわけではないし。「殺人はいけない」という道徳や倫理観も、漂流しているだけの脆いものなのかなと思ってしまった。いろいろ疑問が出てきたが、正直微妙だった。
2021/04/25
抹茶モナカ
最近、年老いて来た母親に対し、介護の心配から殺意(と言うか、「死ねば良いのに。」という思い)を感じ、読んでみた。哲学者の対談から思索が開始されるが、『人を殺していけないのか?』については答えはないらしく、哲学的な仕方でなく、端的にそういう問いを否定してしまう方が良いような気がした。神戸の児童連続殺人事件後に流行した問いに対する本。
2016/10/08
coaf
対談の噛み合わなさが見事。双方共に相手が何を言っているのかを理解していない。まったくもって不毛な対話だった。小泉は哲学者ではなく思想家。しかも、殺人を絶対的悪だと端から決めつけている。これじゃあ対話が成り立たないはずである。永井は対談において終始慎重であり、小泉の思い込みを批判していたが、小泉はその批判の意味さえ理解していなかった。よくこんな本を出版できたものだ。この本は永井による第二章第三節の18ページ分だけ読めば充分である。
2013/06/30
猫丸
永井氏は言説の普遍性を信仰する立場、小泉氏は立場によって言説の価値が変動するとの考えに見える。哲学としての形式を保って見えるのは永井氏の方だろうね。さて何故に人を殺してはならないか。「コンビニ支払いの際、値段を確認してから財布を取り出してはならない」と同じ意味だと「迷惑だから」が答え。二の矢として「じゃあ何故ヒトサマに迷惑をかけてはならないか?」と問うなら質問が次の位相へ進んでおり、これは別質問であるから、人を殺してはならない理由説明は既に終了している。
2023/07/23
Bartleby
なぜ人を殺してはいけないのか。もしこの問いに対する答えが出たら人間が終わる気もする。本書は終始噛み合わない哲学者どうしの対話。倫理について。永井氏は、人類の懸命さも愚かさも現状に、現制度に表現されているという立場。小泉氏はあくまで個の倫理というのにこだわっていて、個々の倫理的実践が現状を変えていくのだという立場。視線のベクトルが違っているので噛み合うはずもない。とはいえお互いの生き方そのものを賭けているような鬼気迫る感じがあり刺激的だった。
2022/11/28
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