ひとり日和 (河出文庫 あ 17-2)
ひとり日和 (河出文庫 あ 17-2) / 感想・レビュー
ろくせい@やまもとかねよし
タイトル編に加えた2短編が収録。自分の意思とは無関係に流れていく時間。そして、それに応じた変化を淡々と、しかししっかりと残す足跡とともに描写する。前編は、親類のおばさん宅に下宿する女性の1年間を描く。彼女は、勧められる大学進学はせず、消極的な自分探しで、流れる時間を過ごす。刺激は恋愛。しかし、彼女の恋愛は利己な妄想で支配される。そんな過去の出来事は心に宿る。今の自分や周囲を、過去の出来事パッチワークとして理解しようとするが、それらは決して同じにならない。そんな多様で仕様もない人間の心境を表現するか。
2020/07/09
ヴェネツィア
2006年下半期芥川賞受賞作。一見したところ刺激的なところのない小説である。斬新かといえば、これもそうではないだろう。ただ、人と人との距離感のあり方は独特だ。そもそも吟子さんの家自体のトポスも微妙だ。東京の郊外なのだが、奇妙に間延びしたような田舎感がある。主人公の知寿と吟子さんとの奇妙な共生、母親との関係もまた互いに個的だ。小説はアイデンティティの希薄さと孤独を描くのだが、その実けっしてヒリヒリしたようなところはない。ある種の温かみと諦念が支配する。そして、それこそがこの小説の持つ現代性と個性なのだろう。
2013/11/10
おしゃべりメガネ
やっぱり青山さんの綴る文章は優しく温かみが伝わりますね。芥川賞受賞作の本作ですが、芥川賞らしいといえばらしく、そんなにガッチリ芥川賞カラーが出てない感じがまた読みやすかったです。とあるコトから自分より50歳も年の離れた女性と過ごすことになった二十歳の主人公「知寿」。そんな二人の不思議な共同生活を淡々と綴っている本作ですが、青山さんらしく随所に温もりがさらりと伝わる作風でした。同居している「吟子」さんのちょっとトボけているようで、ちょいちょいクールな感じが良かったです。ココロが少し穏やかになる作品でした。
2018/02/25
kaizen@名古屋de朝活読書会
芥川賞】現代の二十代独身女性を描写。一人日和といいながら大伯母さん家に同居。退廃という言葉とは無縁。元々やる気があった訳ではないから。恋愛小説のようでもあり、家族小説のようでもある。日常小説なのかも。
2014/05/05
はっせー
再読した!透明感のある文章の中に伏線が隠されていて読んでいて楽しかった!主人公の知寿と遠い親戚の吟子さんとの1年間を綴っている。春夏秋冬が分かれていてそこでのエピソードがとても面白い。そして何より吟子さんがとてもいい味が出てる。普段は知寿に興味なさげだが、たまに名言を言うことによって知寿を間違った方向に行かないようにしていた。この本を一言で表すなら「大人になることとはどういうことか」ではないかと感じた。1年経った知寿は大人に近づいていたと思った。青山さんの小説をまた読みたい!
2020/07/10
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