ドライブイン蒲生 (河出文庫)
ドライブイン蒲生 (河出文庫) / 感想・レビュー
チアモン
家族、そして血の繋がりの濃さがとても心に響く作品でした。3つの短編集でしたが、やはり最後に戻るところは家族の元なんだなぁと感じた。
2018/08/18
hit4papa
夫ともめている姉「ドライブイン蒲生」、行方知れずの母「無花果カレーライス」、死の床についている父「ジャトーミン」。ともに家族に対するわだかまりみたいなものを回想し、今の思いをあらためて確認しちゃう三作品です。ろくでなしの家族をもった人々の、苦悩とはいかないまでも、面倒な日々が浮彫りになります。何があったにせよ、家族に対してはいつかはささやかな赦しの感情が生まれるものだと共感しました。「無花果カレーライス」が最も象徴的です。軽妙で淡々とした語り口ゆえか、感動までは程遠いですね。そこが味なのでしょうけれど。
2018/01/02
いっち
「ドライブイン蒲生」とは、主人公が幼い頃に、父がやっていた店の名前。客が入らない、しがない飲食店。父は店を開けない日が多くなり、酔っぱらう。暴力もふるう。作中の「かすけた」という言葉が印象に残った。やつれた、くたびれたという意味。「かすけた」のは、主人公の姉であり、主人公自身であり、夜の国道一号線であり、切れ味の悪いアイスピック。私は、主人公のことを「かすけている」とは感じなかった。暴力をふるい、酒を飲んだくれた父に育てられ、父を軽蔑していたはずなのに、主人公は、同じような人生を送る、情けない人間のよう。
2022/04/19
dr2006
家族への回帰の3つの短編。左肩の内側がむず痒くなるような、必死になって掻き毟ろうとする彼らの葛藤が描かれている。流れている「血」はただの血液ではない。家族に流れている血だ。入れ替えることは出来ない。伊藤さんの作品は主題の重さに対し淡々としているから後味は悪くない。作中、スペード模様のことを「クロモモ」、ハートを「アカモモ」と言うことが紹介されていて、その昔、真面目な同僚から冗談だと思って聞いたことと、必死に説明するその同僚を思い出して、ちょっとニヤけた(笑)
2015/12/27
桜もち 太郎
三作の短篇集。回想小説、過去と現在が行ったり来たりで、読んでいるうちにドンドンと重くなっていく。表題は2014年に映画化されているが知らない。映画で観たら面白そう。「芥川賞作家の最高傑作」とのうたい文句。芥川賞の作品の方が良かった。表紙の絵が面白い。
2017/12/03
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