きみの鳥はうたえる (河出文庫)
きみの鳥はうたえる (河出文庫) / 感想・レビュー
ミカママ
函館訪問を控えて、積んだままの著者の作品を読むことに。表題作は東京が舞台(彼の大学時代の体験が元か)のようだ。喧嘩っぱやく、刹那的に生きる主人公と静夫、そして間に入る佐知子という女性もだらしなく、好きになれなかった。全体のトーンが『限りなく透明に近いブルー』に似ており、二番煎じなイメージがつきまとう。キレのいい文章は好み。『草の響き』、こちらも著者の体験からか。生活に疲弊してしまった青年が四季を走りきる物語。思わずいっしょに走り出したくなる(走らないけど)。映像化作品を探してみよう。
2023/04/29
kaoru
佐藤泰志の初期代表作。『きみの鳥はうたえる』書店員の主人公と友人の静雄、女友達の佐知子は貧しく刹那的だがそれなりに楽しい無軌道な青春の日々を過ごす。暴力の影やジャズへの言及が70年代らしい。現在ならニートと呼ばれる立場の静雄だが独特の柔らかさが主人公や佐知子に安らぎを与えている。だが家を出た静雄の母をきっかけに物語は急速に破局に向かう。青春の一瞬の輝きが哀しい。『草の響き』精神の不調からランニングを始めた主人公と暴走族や教師の友人との交流を描く。社会とうまく折り合えない人間を描いた彼の作品は何度も映画化→
2023/07/07
いたろう
この文庫に収録の「草の響き」が映画化されたということで、映画を観る前に、もう何度めかの再読。この前に映画化された表題作に比べて、「草の響き」は、話も地味で、まさか映画になるとは思ってもいなかった。「きみの鳥はうたえる」に続いて、「草の響き」も、原作小説の舞台は東京だが、映画の舞台は函館になっている。そして、原作では独身一人暮らしの主人公が、映画では、結婚していて、心の病のため、妻を連れて、故郷の函館に戻ったという設定になっているよう。「海炭市叙景」から始まる、佐藤泰志の5作めの映画化。更なる映画化も期待。
2021/10/09
いたろう
(再読)映画が公開されるということで、映画を観る前に何度めかの再読。函館三部作と言われた佐藤泰志の映画化作品「海炭市叙景」「そこのみにて光り輝く」「オーバーフェンス」で、少なくとも函館を舞台にした佐藤泰志作品の映画化はもうないのかと思っていたので、この作品が舞台を原作の東京から函館に移して映画化されたのは、うれしい限り。キャストの名前を見て、てっきり主人公の役が染谷将太で、静雄が柄本佑だと思ったら逆だった。この配役は全く意外。この映画を起点に新函館○部作とかできたらいいのに。だとしたら、次の作品は・・・。
2018/08/28
アマニョッキ
佐藤泰志の作品が好きだ。ストーリーや文章がどうこうではなく、それはもう本能で好きな気がする。閉塞的で逃げ場のない若者の姿を描く佐藤泰志の視線はいつも優しい。若い映画監督さんがこぞって撮りたがるのもわかる気がする。こういう作品を彼らの感情を掬いながら上手に映像化できたらさぞかし気持ちいいことだろうと。「きみの鳥はうたえる」というタイトルは佐藤泰志自身の心の叫びにも聞こえて、あなたの作品は今もきちんと読み継がれていますよと教えたくなる。もっともっと佐藤泰志の作品が読みたかった。
2018/09/17
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