KADOKAWA Group

Facebook X(旧Twitter) LINE はてブ Instagram Pinterest

八月六日上々天氣 (河出文庫)

八月六日上々天氣 (河出文庫)

八月六日上々天氣 (河出文庫)

作家
長野まゆみ
出版社
河出書房新社
発売日
2011-07-05
ISBN
9784309410913
amazonで購入する Kindle版を購入する

八月六日上々天氣 (河出文庫) / 感想・レビュー

powerd by 読書メーター

三代目 びあだいまおう

昭和20年8月6日、その日は雲ひとつない快晴だった。風も乾いた上々の天気。そんな広島に原爆が落とされた。戦時ゆえ多くの我慢を強いられながらも慎ましく、小さく平凡な日常の幸せを探し感じて暮らす多くの多くの人達の命が人生が、その一瞬で失われた。これは昭和16年暮れからその日まで一人の少女を追いかけ、短い新婚生活や成長してゆく小さな従弟への感情の変化などを、著者の美しい文章と情緒的表現で紡ぐ文学です。『その日』はたった9ページ。『その後』は全く述べられない。それが一層忘れてはいけない何かを訴えかけてくる‼️🙇

2018/12/02

yoshida

昭和十六年暮れの東京から物語は始まり、昭和二十年八月六日の広島で物語は終わる。東京で女学校に通う珠紀は、従弟の史郎に慕われている。珠紀は史郎の担任教師である市岡と結婚。市岡は軍に志願。珠紀は市岡の郷里の広島へ移り住む。史郎も海軍兵学校を受験する為、珠紀を頼り広島へ移り住む。淡々と進む静かな日常。市岡の特攻死の予感。八月六日に広島市中心部に向かい亡くなった史郎の幻。静謐で美しい日本語で綴られる毎日が、迫る八月六日の恐怖を際立たせる。珠紀は親しい者を喪った毎日をどう過ごすのか。平和について考えさせられる作品。

2016/08/18

nobby

本日まさに八月六日、哀しくも広島の空は雲ひとつない快晴だ…コロナ禍で混迷極める中、例年通り午前8時15分に鳴るサイレンに黙祷を捧げる…このタイトル、そして表紙に映える在りし日の原爆ドームから、それは分かっていたことだ…でも、作品内での表現は「八時過ぎごろ、台所のガラス戸がやけに振動するので」これだけ…なのに、広島駅へ電車で向かう無垢な少年の姿に打ちひしがれる…十代を自由奔放に生きる女学生の思うままの心情は小生意気でいて清純そのもの。彼女が得た恋慕や思慕は凛々しく、そして優しい…それがまた読了して涙を誘う…

2020/08/06

しいたけ

物語は美しい光の色を纏い熱い沙の上をすべる。昭和二十年八月六日を目指して。そこには人の隠し通した想いがあり、尋ねられなかった疑問があり、誰かに引き継ぎたい希望がある。原爆ドームを見るべきだと人は言う。一方で記憶の封印を解かないために遠回りをする人もいるのだと、あとがきで知る。被爆者である長野まゆみの父親のことだ。原爆投下を目の前に突き出さない描き方は、父親への優しさだろう。その労りこそが、ありふれた日常を奪われた人々の無常を際立たせる。あの日の朝が近づくにつれ、私の胸は不穏な音を刻む。そして長く目を瞑る。

2017/08/06

おたけஐ೨💕🥒🍅レビューはボチボチと…

87/100点 8月6日にぜひ読んでみたいと思い手に取った作品。開戦から終戦までの戦時中の生活が、長野さんらしい美しい文章で淡い水彩画のように描かれています。戦争の悲惨さや残酷な描写も全く無いままに、静かにその日を迎え大事な人が失われていくところに、より切なさを感じました。原爆というテーマを描きながらも、そのことの具体的な描写をしないことで、読む者の想像力が深く掻き立てられて何とも言えない余韻を生んでいました。一瞬にして平穏な日常や大事な人を奪い去る戦争の非情さを、改めて感じさせられる作品でした。

2018/08/06

感想・レビューをもっと見る