いつも異国の空の下 (河出文庫)
いつも異国の空の下 (河出文庫) / 感想・レビュー
ほほほ
〝オムレツの石井さん〟で有名な石井好子さんの自伝的エッセイ。歌を歌うことを極めるためには外国の文化に触れなくてはと、戦後まもなく女一人でサンフランシスコに旅立ち、その後パリへ行きシャンソンに出合い、あれよあれよという間に歌手として活躍していく石井さん。サンフランシスコ、パリ、スイス、スペイン、ドイツ、キューバ、ニューヨーク…たった8年の間にこんなに世界中を駆け回っていたなんて。もっともっと長い期間海外生活を送られていたのだとばかり思っていました。知らなかった石井さんの新たな一面もたくさん読めて大大大満足。
2018/12/02
橘
「生活」で面白かったです。1950年代の8年間、欧米で一人で生きるバイタリティーに圧倒されました。表現が率直過ぎる…と思ったところも、石井好子さんの周りの人々がリアルに浮かび上がってきて面白いです。一章しか割かれてないけどキューバは衝撃…マリアもたいへん濃い人物ではありましたが。 藤田嗣治とアルベルト・ジャコメッティ…凄い。好子さん、かなり客観的というか第三者目線なところが凄いバランス感覚だなぁと思います。でもそんなところも、好子さんにとってはあとがきに書かれてたような心持ちになるのかもしれません。
2022/07/25
ひとみ
離婚した後に一念発起して歌手を目指し、アメリカ経由でフランスに渡りプロとしてヨーロッパやアメリカで活動していた頃の回想記。戦後数年しか経っていない時期の渡航に教科書に出てくるような文化人や芸術家の名前が頻繁にでてくる所に目眩がするが、筆致は常にサラサラしていて感情過多ではない感じが独特。愛着のある人々や場所の思い出であっても冷静さが失われないのは異邦人の回想記である所が大きいのかもしれない。革命前のキューバの頽廃的な空気や、苦味の強い大人の恋愛模様が印象深い。
2015/05/04
優夏子
石井さんのエッセイを初めて読んだのですがとても気に入りました。彼女の文章には嫌味がありません。普通以上のところにいる人でありながら、あくまでも1人の人間として周りを見つめ、働き、誰にでも平等に接する石井さん。そしてどんな人でも批判せず皮肉らず、ただ受け入れることの出来る彼女にどうして尊敬の念を抱かずにいられましょう。
2015/02/17
KO
石井好子さんのエッセイにしては珍しく、食べ物の話はほとんど出てこず、タイトルの通り異国の空の下での生活が淡々と描かれる。戦後まもなくに海外で音楽の勉強をして、パリでシャンソン歌手になって、と華やかな人生だと思うけど、「仕事」としては普通の人と変わらない、日常のことを毎日きちんとこなすという生活だったんだと思った。華やかというより、職業婦人の第一線の厳しさを感じたエッセイでした。当時の一流の歌手や芸術家との交流が日常の延長として出てくるのには、「おーすごい」と思っちゃったけど。
2015/01/03
感想・レビューをもっと見る