一人の哀しみは世界の終わりに匹敵する (河出文庫)
一人の哀しみは世界の終わりに匹敵する (河出文庫) / 感想・レビュー
めろんラブ
「読者は、私の伝えようとしたことの1/100も理解していないと思う」。これは以前、ある作家のインタビューで耳にした言葉だ。わかったつもりになるなよ、と釘を刺されたようで居心地が悪く、でも、妙に腑に落ちた。作り話のからくりを、拙いながらも自分なりに解くこと。それが即ち読書なのかもしれないと、つれづれに思いつつ読了。眩暈がするほど難解なブンガクの波に飲み込まれ、打ちのめされてなお食らい付きたいと思わせてくれる魔力。1/100どころか1/10000も理解できずとも、高次のものに触れた実感だけは信じたい。
2014/07/01
絹恵
"一人の哀しみは世界の終わりに匹敵する"。これに尽きると感じました。この思いは少なくとも私にはこの言葉でしか表せなくて、でも世界の終わりにつまずきを与える者が言葉に出来ないような思いを残させるように深みに落とし込んで、そしてまたこの言葉で救われるのだと思います。それが物語の法の在処なのかもしれません。
2015/04/07
ito
鹿島田さんは好みがわかれる作家だと思う。本書は2つの短編をまとめたものである。「レギオンの花嫁」は本当に難解な物語で、読後に解説を読んでそうか、と理解できた。難解な点は別として、私はこういうイノセントな女子が登場する話が好きなので、理解に苦しみながらも手が止まらなかった。「一人の哀しみは・・」はミッション系女子高を想像し、にやにやしながら読んだ。聖書の二次創作作品としてもおもしろく、かといって神聖さも失っておらず、読後感もよかった。「こちらあみこ」を想い出した。
2013/02/10
いたろう
鹿島田真希の初期作品集。表題作の聖書を解体して筋に取りこんだ物語はシュールでユーモラス。芥川賞受賞作が何だか普通の小説になっていて残念に思ったが、これこそ鹿島田真希の世界。このテイストがたまらない。併録の「レギオンの花嫁」は非常に難解。二度読んだが、意味するところを理解しきれず。それなのにやっぱり面白い。
2013/12/30
たぬ
☆4 鹿島田氏15冊目。これは多少なりとも聖書になじみがないと面白さがわからないのではないかしら。「自分のあばらから女をつくる」「イチジクの木」「石を投げる」「カナ」「イサク」…。私も『聖☆おにいさん』なら読んでたからこの寓話が意味するところはなんとなく読み取れた(と思う)けど。併録の『レギオンの花嫁』は既読なので感想省略。
2021/01/03
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