ビッグデータ社会の希望と憂鬱 (河出文庫)
ビッグデータ社会の希望と憂鬱 (河出文庫) / 感想・レビュー
nakitsu
技術者というよりジャーナリスト目線で書かれた情報技術の発展に対する警鐘。個人情報が気づかぬうちに収集・集約されて、ターゲットマーケティングや検索結果という形で個人の自由を制限し、個人もそれに流されてしまう。過敏な危惧かと思いましたが、実際に米国では住所、性別から、社会保障番号や銀行口座内容まで統合的に把握するTIAという計画があったそうです。米国では市民の反発が起こり計画は消えましたが、もしも日本で同様の計画が起こった時に日本の大衆は正しく察知して反応できるのか。そういう意味でこうした警鐘は大事ですね。
2012/12/30
ぱんだ
2005年に刊行された本に加筆修正を加えたもの。 恐ろしいほど現在に当てはまっていて、とても10年前に書かれたとは思えない。逆に言えば、人間による技術の進歩は、まさに本に書かれていたように、予測可能になってきているのだろうか。 少し残念だったのは、加筆の少なさである。もう少し、各章に現在のことが書かれていても良かった。後半は少し新鮮さがなかった。 この本が世に出て二年、もうすでにビッグデータという言葉は人口に膾炙していると言って良いだろう。 予測の通りに世界が進んでいくことに、少し恐怖を感じた。
2014/07/08
山島 小吉
監視社会は望まれている。ライフログは広まり、SNS上で無償の労働が絶え間なく行われている。TSUTAYAカードはTSUTAYAを飛び出し、あらゆるところで、使用者の購入データをためていく。反面、暮らしは商業データベースによって管理され、生活はより便利なものになっている。監視社会は一方的に押しつけられるものではなく、望んで得るものかもしれない。多くの選択肢から選び取るよりも、小さな選択の余地が無いほどに狭められた選択肢から選ぶ方が楽だから。喜んで読んだ小説を公開しているのもまったく同じだよねと思う。
2013/04/14
非日常口
生体認証と言えば聞こえはいいが、iPS細胞を悪用したらかなりまずいことになるのではないか。そういうアナロジーを触発してくれる本でした。選挙対策で私たちのビッグデータは悪用されているかもしれないですし、それがB層という形で今後ターゲットとされることもあるでしょう。ITやICとデジタルに進む時代を振り返るタイミングに来ているのではないでしょうか。パノプティカルな時代はすでに到来しています。
2012/11/16
やすかりし
かつて「ユビキタス」という言葉を初めて聞いた時の高揚はいまやむなしく何か違和感を感じていましたが、これを読んでその違和感の正体に気づかされた思いです。ポイントがたくさんついてお得だと思っていたら、購買行動のすべてが収集されている現実。防犯カメラがついて安心になったと思う駅前通りで、自分が監視されている現実。物理的にコミュニケーションを促進する環境が整ったのに、却って民主主義が衰退していくという現実。道具を使うどころか道具に使われてばかり。自分が何を容認出来て、何を拒絶すべきなのか、きちんと考えなければ。
2014/04/03
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