岡倉天心 ---その内なる敵 (河出文庫)
岡倉天心 ---その内なる敵 (河出文庫) / 感想・レビュー
koji
本書は、いきなり、九鬼隆一家から巣鴨病院に提出された「波津子夫人再入院申請書」の全文掲載から始まります。天心と九鬼波津子(哲学者九鬼周造の母)は、今で言う不倫の仲。波津子は精神に異常をきたし、何度も病院を脱走しました。近代日本美術の理論的指導者天心も、その破綻的な性格とエピソードから、清張さんの手に掛かると、「官僚主義者、意志薄弱、斑気、アジテータ」と「内面」を丸裸にされます。唯清張さんは芸術家を非難しているのではなく、綺麗事でない人間の本性と芸術の関係の根源を突き詰めるのが主題と分かります。読み応えあり
2023/09/01
いわきりなおと
人間、岡倉天心の話。つまり影の部分がメイン。政治力って大事。
2014/08/21
エリック
清張が天心に関わるほぼ全ての資料に当たり、縁者や門下生によって半ば神格化されている天才天心の光と影の両面をえぐり出す。尻切れとんぼ感がなくもないが天心のバサラ気質を物語るエピソードなど面白い。それにしてもこれまで得体の知れなかった東京美術学校事件の想像以上のえぐさに驚いた。
2015/07/23
bishop8856
なんとなく手にとって、なんとなく読んでしまった。松本清張の取材力がすごい。
2014/05/17
Gen Kato
松本清張の書く評伝は対象者を必要以上に矮小化するきらいがあって(それは、一面の真実ではあるけれど全体像ではない)、正直あまり好きではないのだけれど、取り上げる人物はさすがのセレクトなのでつい手に取ってしまう。岡倉天心とはつ子さんを描いたもっとも美しい(そして哀しい)文章ははつ子さんの子・九鬼周造のエッセイなのだけれど、あれはやはり願望とあこがれを含んだ「伝説」として読むべきなんでしょうね…
2014/04/06
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