こんこんさま (河出文庫)
こんこんさま (河出文庫) / 感想・レビュー
ダリヤ
石が亡くなってからも、北鎌倉の家にドロドロと冷え切り、バラバラになっていた家族はずっと閉じ込められていたのだとおもうと石の存在感にぞくっとする。家族のしあわせを願うさちが連れてきた他人は悪だったけれど、根こそぎもっていかれたことが石までうばいさってくれたかのように光がさしこむ。わたしもさちのあたまをなでたくなるくらい、この家族のしあわせをいっしょに祈った。
2014/10/12
*すずらん*
地元の鎌倉が舞台ということで手に取りました。バラバラだった家族が、ひょんなことから集まった場面から話は始まります。中脇さん独自の問題を抱えた家族の姿。あたしの家を幸せにしてと、占い師に頼むさちの何といじらしいことか。正に家の再生を図りながら、家族は徐々に不自然に空いている距離を近付けていきます。誤解やすれ違いに気付き互いに歩み寄る様は、ぎこちないながらも確かな愛を感じました。そして最後、家族の誰もが頭が上がらなかった恐ろしい存在の石が、本当はどれだけ息子を案じ愛していたかがわかった時、温かい涙が伝いました
2013/10/02
ソーダポップ
ばらばらだった家族が、再生していく物語。本当は誘拐犯であり詐欺師でもある自称易者の叶旭山が、一儲けの為に家見相と称して、「こんこんさま」と呼ばれる屋敷に闖入したことで一転、家族が一つにまとまっていきます。中村初枝さんは、どの著書も読了後、感動と爽やかさを与えてくれます。この著書も大変良かった。
2021/06/13
TANGO
図書館本。北鎌倉が舞台の、「家族再生のささやかなものがたり。」崩壊しかけた家族、古い屋敷に池のある大きな庭。家族それぞれに抱えたり、背負ったりしているものがあって、上手く前が見えていない。そこに珍客到来で、いろいろ見えてきたものが、私にも希望を感じさせてくれた。檻にとらわれていたのは、こんこんさま、だけじゃなくて、そこから解放されたのも、こんこんさま、だけじゃない。ものがたりは、ここからまた始まる。
2014/01/30
メタボン
☆☆☆★ 旧家の没落を家相になぞらえて説く旭山のくだりから俄然面白くなった。旭山のダマシのテクニックがいかにもそれらしくて、あっけにとられた。祖母の石により檻によって閉じ込められていたこんこんさま(お稲荷さん)が解放されるのと同時に、母の都と、娘のさちのわだかまりがほどかれていった。テーマや素材が良いだけに、構成に不満が残る作品だったのは、作者の力量がまだ十分ではなかったということか。文庫にするにあたり書き直したとのこと。
2021/10/16
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